アルデヒド・ケトンの性質
アルデヒドとケトンはともにカルボニル基(C=O)を有する化合物で、アルデヒドは R-CHO、ケトンは R-CO-R’ で表されます。
アルデヒド・ケトンの反応点は 3 つあります。
- カルボニル基(C=O)の C です。δ+ に分極しているために、求核攻撃を受けます。
- カルボニル基(C=O)の O です。ここはルイス塩基としての性質を持ちます。
- カルボニル基の隣の C についた H です。この位置にある H はα水素と呼ばれ、弱酸性を示します。
また、アルデヒドとケトンの求核試薬に対する反応性を比較すると、往々にしてアルデヒドのほうが反応性が高いです。
カルボニル基の C 原子は δ+ に分極していますが、隣にアルキル基(電子供与基)があれば、分極をやわらげるように電子が流れてきます。そのようなアルキル基がケトンには 2 つありますが、アルデヒドには 1 つしかありません。
よって、アルデヒドのほうが分極の度合いが高くなり、反応性も高くなります。アルデヒドの中でも、アルキル基を 1 つも持たないホルムアルデヒドは、特に反応性が高いといえます。
アルデヒド・ケトンの反応
上述のとおり、アルデヒド・ケトンの反応は C=O の C か O 、あるいはα水素のいずれかが反応点となります。
ここでは
- 求核付加反応
- α水素での反応
- その他の反応
に分けて解説をしていきます。
最初の求核付加反応は、カルボニル基の C を求核攻撃することによって、水やアルコールが付加するような反応です。水やアルコール以外にも、シアン化水素やアミンなど、多くの求核試薬を用いることができます。
特に重要な求核付加反応としては、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)や水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)による還元反応、Grignard (グリニャール)試薬による炭素鎖伸張反応などがあります。詳しくは、次項以降で解説をします。
次にα水素での反応について、α水素は酸性度が高いために反応性に富んでいます。有名反応である aldol (アルドール)反応や類似の aldol 縮合、Michael (マイケル)付加反応、ヨードホルム反応などがこのカテゴリーに該当します。
aldol 反応は、2 つのアルデヒド(またはケトン)を繋げる、2 分子間の付加反応です。aldol 反応からさらに脱水反応が起こると、この一連の反応は aldol 縮合と呼ばれます。
Michael 付加反応は、エノラートイオンを求核剤とした、1,4-付加反応です。
ヨードホルム反応は、α 位のハロゲン化を利用したヨードホルム(CH3I)の生成反応で、メチルケトン基の確認試験に用いられます。
これらについても、次項以降で詳解します。
その他の反応でも、多くの重要反応があります。
まず、Wittig (ウィッティヒ)反応。アルデヒド(またはケトン)がリンイリドと反応することでアルケンが生成します。
次に、Baeyer-Villiger (バイヤー・ビリガー)酸化。ケトンと過酸が反応して、エステルが生成します。
続いて、Clemmensen (クレメンゼン)還元。これは亜鉛アマルガムを用いて、カルボニル基をメチレン基に還元する反応です。
最後に、Wolff-Kishner (ウォルフ・キシュナー)還元。これも Clemmensen 還元と同様、カルボニル基をメチレン基に変える反応ですが、こちらは試薬にヒドラジンを用います。
どれも重要な反応ですので、次項以降で詳しく解説をしていきます。
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