タンパク質の分離、精製と分子量の測定法

タンパク質の分離、精製とは、様々な混合物を含んだ試料から目的蛋白質のみを取り出すことです。

分離・精製には、クロマトグラフィーが主に用いられます。対象となるタンパク質の性質や、求められる精製度(結晶化が目的であれば、相当に高純度、活性確認であればある程度の精製でOKなど)によって、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどが時には組み合わされて用いられます。

ゲルクロマトグラフィーは、分子ふるいクロマトグラフィーです。カラムに詰められた多孔性の樹脂からなる担体中に試料を通過させます。すると、分子量の大きいものほど、速く通過します。試料を少しずつ画分に分けて取得し、UV などでピークを見つつ目的蛋白質の入った画分を取得します。サンプルの量が、精製を通じて、かなり減ります。

イオン交換クロマトグラフィーは、イオン交換樹脂が担体です。試料を通過させ、樹脂との親和性により結合させた後、溶出液と呼ばれる液体をだんだん塩濃度が高くなるようにして流していきます。陽イオン交換樹脂には、塩基性タンパク質が吸着します。

目的タンパク質の性質がよくわからないときは、ひとまず素通り画分もキープしておき、どの画分に目的タンパク質があるかを分子量などに着目して同定していくという作業が必要になります。

アフィニティークロマトグラフィーは、特異的な結合性を持つ分子を利用した分離精製の方法です。代表的なものとしては、タンパク質にヒスチジンタグ(His-タグ)と呼ばれるヒスチジン 6 残基を発現時につけておき、Ni カラムなどのような金属イオンを含むカラムを用いることで、特異的に His -タグ が発現しているタンパク質を分離・精製するといった方法がよく用いられています。

分離・精製したタンパク質は、分子量を SDS-PAGE で確かめることがよくあります。SDS-PAGEとは、SDS(sodium dodecyl sulfate:ドデシル硫酸ナトリウム)という界面活性剤によりタンパク質の S-S 結合を切断するとともに、SDS を結合させることでタンパク質を棒状にした上で(つまりタンパク質の形を整え、純粋に分子量のみの影響を考慮する下準備を行い)PAGE(poly acrylamide gel electrophoresis:ポリアクリルアミドゲル)中を電気泳動し、その泳動速度によって分子量を測定する方法です。

※この時、モデルとなる分子量を持ったタンパク質を混合させた標準溶液を一緒に電気泳動することによって、素早く大雑把にタンパク質の分子量を知ることができます。

※SDS-PAGE は、電気を流し始めて大体数分でタンパク質が流れるのですが、この時油断して居眠りをしていると、全てタンパク質が流れてしまって実験やり直しだったり、やけに流れるのに時間がかかったり、アクリルアミドゲルはお手製なのですがこのゲルが冬はなかなか固まらなかったり、なぜか綺麗に固まる時とそうでない時があったり、、、、となかなか予定通りにいかない実験手法の1つでした。

安定してくるとポイントがわかってくるのですが、とても印象深い操作の1つです。こういった一つ一つの『生化実験の単位操作』に関して、毎年、新入生をどう習熟させるか、他の分野の人がちょっと SDS-PAGE も手法として使いたいといった時にどう情報を共有するか、後片付けの注意点、実験結果のまとめ方のフォーマット、デジタル化する時のプロトコルやコツなどなどが
各研究室、各世代により、まだまだ標準化されていないようです。

研究にあたっては、是非そういった点を、自分が配属された時よりはよりよい形にして卒業していく事を心がけてほしいと思います。すなわち、自分が苦労した点はもう他の人が苦労をする事のないように残る形で、日々を過ごしていってほしいなと思います。

ちなみに、SDS-PAGE では、分子量でタンパク質を分けているだけなので、本当に目的タンパク質が精製できているかは実はわかっていません。そこで、決定的な確認方法としてウェスタンブロット法が行われます。

すなわち、SDS-PAGEで目的タンパク質(候補)を分離後、そのゲルを(プリプリしていて扱うのはドキドキするしたまに破れたりするのですが(汗))メンブランフィルターに転写した後、一次抗体を結合させ、発色基質を結合させた二次抗体を更に結合させることにより目的タンパク質を確認する方法です。

コメント