国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H30年 問71解説

 問 題     

ある神経ペプチドをキモトリプシンで処理したら、次の 3 種類のペプチド断片が得られた。

この神経ペプチドをトリプシンで処理して得られた最も長いペプチド断片は10 アミノ酸から成るペプチドであった。この神経ペプチドに関する記述㋐、㋑、㋒のうち妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

㋐ N 末端のアミノ酸はメチオニンである。
㋑ C 末端のアミノ酸はグルタミン酸である。
㋒ トリプシンで処理すると 7 種類のペプチド断片を生じる。

1.㋐
2.㋐、㋑
3.㋐、㋒
4.㋑
5.㋒

 

 

 

 

 

正解.4

 解 説     

トリプシン、及びキモトリプシンについて知っていることが前提と考えられます。

セリンプロテアーゼの一種であるトリプシンの活性ポケットは狭く、活性部位の底に Ser 、及び負に帯電した Asp のカルボキシル基があります。そのため「正電荷を有する長鎖アミノ酸(Lys,Arg)」を強く結合します。

キモトリプシンのポケットは狭く、非極性アミノ酸が並んでいます。そのため「平面性が高く、非極性側鎖を有する Phe,Tyr,Trp の C 末端」を認識して切断します。

共に「エンド」切断、つまり内部を切断します。

キモトリプシンでの切断では「右側にPhe,Tyr,Trp」がある部分が切断された部分です。下図のようなつながりだったと考えられます。

従って、N 末端は「Tyr」、C 末端は「Glu」と考えられます。㋐ は誤りです。㋑ は正しいです。

ちなみにトリプシン処理すると、Lys が 5 個あり、この右側が切断されます。N 末端を1、C 末端を 31 と名付けると、確かに 7 種類の断片( 1-9、10-19、20-24、25-28、29-31、29、30-31)ができるのですが、29 のみは「ペプチド」ではありません。よって、㋒ は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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