国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H30年 問69解説

 問 題     

害虫の殺虫剤抵抗性に関する次の記述のうち最も妥当なのはどれか。

1.昆虫の世代時間が長いほど、殺虫剤の淘汰圧を長く受けることから効率良く淘汰され、殺虫剤抵抗性が短期間に発達する。

2.ある種のピレスロイド剤に抵抗性を示すコナガの個体群では、その他の未使用のピレスロイド剤にも高い抵抗性を示した。このような現象を複合抵抗性という。

3.殺虫剤抵抗性の発現機構の一つである皮膚透過性の低下は、他の抵抗性因子よりも抵抗性に大きく関与している。

4.ツマグロヨコバイのカーバメート剤抵抗性の主要因は、アセチルコリンエステラーゼのカーバメート剤に対する感受性の低下である。

5.有機リン剤抵抗性系統のモモアカアブラムシの加水分解酵素は、有機リン剤に対し、加水分解活性を示さないが、捕捉結合活性を示し、これにより抵抗性を発現している。

 

 

 

 

 

正解.4

 解 説     

選択肢 1 ですが
「世代時間が短いほど」変異が起きて抵抗性を獲得しやすいと考えられます。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
記述は「交さ抵抗性」です。複合抵抗性とは、複数の殺虫剤使用時、それぞれの殺虫剤に抵抗性を示す現象です。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
排出機構や解毒機構、殺虫剤の分解作用を持つ共生菌の取り込みなどが関与しています。皮膚透過性の低下が他よりも大きく関与しているという記述は、妥当ではないと考えられます。

選択肢 4 は妥当な記述です。

選択肢 5 ですが
解毒分解酵素の一種であるカルボキシルエステラーゼが「大量に合成」されることで抵抗性を発現しています。また、抵抗性発現に補足結合活性が関与することが知られているのは「ワタアブラムシ」です。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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