国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H30年 問57解説

 問 題     

環境汚染物質に関する記述 ㋐ 〜 ㋓ のうち妥当なもののみを挙げているのはどれか。

㋐ 船底や漁網への貝類などの付着防止を目的とし、防汚塗料として用いられてきたトリブチルスズ化合物は、内分泌攪乱作用をもち、低濃度でも海産巻貝類に対して不可逆的にインポセックス(雌の雄性化現象)を引き起こすと考えられている。

㋑ 水俣病の原因であるメチル水銀は、チオール(SH)基を介して広範囲に酵素系の活性を阻害し、細胞障害や細胞死をもたらす。特に腎臓に蓄積しやすく、慢性の腎障害を引き起こす。

㋒ 有機ヒ素は、バングラデシュの一部の地域の地下水に高濃度に含まれており、この地域の住民は、皮膚疾患、末梢血管疾患を中心とする深刻なヒ素中毒の危険にさらされている。また、有機ヒ素はヒト発がん物質であるため、この住民の発がん率は高い。

㋓ アスベストは、ケイ酸を主体とする結晶構造をもち、耐熱性、防音性に優れた鉱物繊維として建築材料等に用いられてきたが、肺がん、悪性中皮腫の原因になるとされ、現在、我が国では、試験研究用途等を除き、製造等が禁止されている。

1.㋐、㋑
2.㋐、㋓
3.㋑、㋒
4.㋑、㋓
5.㋒、㋓

 

 

 

 

 

正解.2

 解 説     

㋐ は妥当な記述です。
トリブチルスズは、内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)の疑いが持たれている物質です。

㋑ ですが
水俣病は中毒性中枢神経系疾患です。「慢性の腎障害」を引き起こすわけではありません。よって、㋑ は誤りです。

㋒ ですが
「無機ヒ素」です。有機ヒ素ではありません。よって、㋒ は誤りです。

㋓ は妥当な記述です。

以上より、正解は 2 です。

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