国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H28年 問94解説

 問 題     

放射線の人体への影響に関する記述㋐〜㋓のうち妥当なもののみを挙げているのはどれか。

㋐ 重粒子線を用いた放射線治療では、腫瘍部分にブラッグピークを合わせることで、腫瘍部分に限局した照射が可能になる。

㋑ 臓器や組織の種類によって放射線感受性は異なり、成人においては、水晶体上皮細胞よりも神経細胞の方が放射線感受性が低い。

㋒ 放射線によって誘発される染色体異常のうち、二動原体染色体は、被ばく後の経過年数が長い場合における被ばく線量を推定するための指標として用いられる。

㋓ 放射線被ばくによる脱毛は確定的影響に分類され、その重篤度は被ばく線量に依存しない。

1.㋐、㋑
2.㋐、㋒
3.㋑、㋒
4.㋑、㋓
5.㋒、㋓

 

 

 

 

 

正解.1

 解 説     

㋐、㋑ は妥当な記述です。
ブラッグピークとは、高線量域のことです。
神経細胞は分化度が高く、代表的な感受性が低い細胞です。

㋒ ですが
解析の指標とする染色体異常は、主に3種類に分類されます。二動原体染色体、染色体転座、環状染色体です。二動原体染色体は、主として急性外部被ばく(全身被ばく)の線量評価に用いられます。過去の被ばくにおける線量推定で用いられるのは「染色体転座」です。ちなみに、高線量被ばくが疑われる場合に適用するのが環状染色体です。よって、㋒ は誤りです。

㋓ ですが
記述前半は妥当です。しかし、重篤度は線量が大きくなるに応じて、大きくなります。線量に依存しないわけではありません。よって、㋓ は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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