国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H28年 問49解説

 問 題     

放射性同位元素でラベルした薬物 A1、A2、A3 は、 それぞれ解離定数 0.1、 3 、10 μM で細胞膜に存在する受容体 R に特異的に結合する。また、非放射性薬物 B1、B2、B3 は、それぞれ放射性薬物 A1、A2、A3 と競合して受容体R に特異的に結合する。これらの結合は可逆的であり、質量作用の法則に従うものとする。

一定温度の下、10 μM の放射性薬物 A1、A2、A3 を、種々の濃度の非放射性薬物 B1、B2、B3 とそれぞれ混ぜ、細胞膜標品と混和して受容体結合実験を行った。その結果、平衡状態における放射性薬物の特異的結合を縦軸、用いた非放射性薬物の濃度を横軸にとると図のような曲線が得られ、平衡状態において放射性薬物の特異的結合を 50 % 減少させる非放射性薬物濃度(IC50)は表のようになった。このとき、非放射性薬物 B1、B2、B3 の受容体R に対する解離定数の大きさの順として最も妥当なのはどれか。

ただし、①各薬物の細胞膜標品への非特異的結合量は無視できるものとする、②受容体 R に結
合している各薬物の濃度は、受容体 R に結合していない各薬物の濃度に比べ、無視できるほど低いものとする、③各薬物が受容体 R に結合しても、薬物が結合していない残りの受容体R の当該薬物に対する親和性は変化しないものとする。

 

 

 

 

 

正解.2

 解 説     

解離定数が表すのは、ちょうど受容体 R と半分結合するような薬物濃度です。解離定数が大きいほど、くっつきにくいと考えればよいです。

放射線薬物 A1 と、非放射性薬物 B1 の実験に注目すると A1 の解離定数 0.1 に対し、B1 が 100 μM 必要だったとわかります。

実験 2 に用いる A2 の解離定数が、A1 の 30 倍なので、A2 は、30 倍 R にくっつきにい薬物と考えます。この A2 に対し、B1 を用いたと仮定すれば、 1/30 倍の濃度(3.33…μM)で IC50 に到達するのではないかと思われます。すると B2 は、20 μM 必要だったため、B1 よりもくっつきにくい薬物ではないかと判断されます。つまり、解離定数は B1 < B2 です。

同様に、実験 3 に用いる A3 の解離定数は A1 の 100 倍なので、100 倍 R にくっつきにくい薬物と考えれば、B1 を用いたと仮定すれば、1/100 倍の濃度(1 μM)で IC50 に到達すると思われます。すると B3 は 0.5 μM でよいため、B1 よりもくっつきやすい薬物と考えられます。解離定数は B1 > B3 です。

以上より、B2>B1>B3 となります。正解は 2 です。

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