国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H28年 問3解説

 問 題     

圧力を P、体積を V として、理想気体が図の PV 線の状態をとった。状態 A、B、C、D 及びこれらの間の状態変化に関する記述 ㋐ 〜 ㋓ のうち妥当なもののみを挙げているのはどれか。ただし,P1 < P2,V1 < V2 である。

㋐ A〜D のうち、内部エネルギーが最も大きいのは C であり、最も小さいのは A である。
㋑ A〜D のうち、エントロピーが最も大きいのは B であり、最も小さいのは D である。
㋒ 気体を A から C に変えるとき、A → B → C としても A → D → C としても、加える熱量
は等しい。
㋓ 気体を A → B → C → D → A と変化させるとき,どのような条件を設定しても,A → B → C で加える熱エネルギーと PV 線に囲まれた面積に相当する仕事を等しくすることはできない。

1.㋐,㋑
2.㋐,㋓
3.㋑,㋒
4.㋑,㋓
5.㋒,㋓

 

 

 

 

 

正解.2

 解 説     

㋐ は妥当な記述です。
内部エネルギー U = 3/2 × nRT です。つまり T に比例します。また、理想気体なので PV = nRT です。A → B、B → C の過程は、それぞれ V が一定で P 上昇、P 一定で V 上昇なので、T が上昇する過程です。このため、C の温度が最も高く、内部エネルギーも一番高いと考えられます。

また、C → D、D → A の過程は、同様に考えれば温度が低下する過程です。このため、A の温度が最も低く、内部エネルギーも一番低いと考えられます。

㋑ ですが
A → B → C の過程は T が上昇します。よって、 B よりも C の方がエントロピーは大きいと考えられます。よって、㋑ は誤りです。

㋒ ですが
A → B → C という経路における仕事量と、A → D → C という経路における仕事量は以下のように異なります。

仕事の量が変わるため、加える熱量も異なると考えられます。よって、㋒ は誤りです。

㋓ は妥当な記述です。
「熱を完全に仕事に変えることはできない」という、熱力学第二法則、もしくはトムソンの法則です。

以上より、正解は 2 です。

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