問 題
突然変異に関する次の記述のうち最も妥当なのはどれか。
1. ある条件下では表現型が変化するが、他の条件下では変化しない突然変異を機能低下変異と呼び、シャムネコの耳等が黒いのは、末端部の体温が低いところでのみメラニン生産が行われるためである。
2. DNA 上のある部位から他の部位へ転移可能な、定まった構造をもつDNA 単位を転移因子と呼び、メンデルが調査したエンドウの種子のしわは、転移因子を原因とする突然変異の代表例である。
3. DNA 上のある塩基が別の塩基に置き換わる塩基置換には、トランジションとトランスバージョンの2通りがあり、自然条件下では後者の起こる確率の方が高い。
4. アルキル化剤であるエチルメタンスルホン酸は突然変異原と呼ばれ、本物質で処理することにより、原核生物では変異の頻度を自然発生率以上に上げることができるが、真核生物では処理の効果がみられない。
5. 染色体の部分的な重複や欠失が生じる多重乗換え(多交叉)は、DNA 内部に繰返し構造があると特に起こりやすく、赤緑色覚異常はその代表的な例である。
解 説
選択肢 1 ですが
シャムネコの耳等が黒い理由は、メラニン色素合成に必要な酵素の一つであるチロシナーゼが変異型で、高温で活性を有しないため、末端部の体温が低い所でのみメラニンが生成される、というメカニズムです。特に機能が低下している、というわけではありません。名前に違和感を覚えるのではないでしょうか。選択肢 1 は誤りと考えられます。
選択肢 2 は、妥当な記述です。転移因子には、トランスポゾン(カット&ペースト型の移動)が含まれます。
選択肢 3 ですが
トランジションとは、プリン間(A↔G)やピリミジン間(C↔T)の塩基置換です。トランスバージョンはプリン↔ピリミジン間の塩基置換です。一般に前者が起こりやすいです。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
真核生物でも効果が見られると考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
赤緑色覚異常は、点突然変異の一種である、ミスセンス変異(異なったアミノ酸残基が入ってしまうような変異)が原因です。多重乗換えのの代表例ではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2 です。
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