国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H26年 問94解説

 問 題     

放射線治療に関する記述 ㋐ ~ ㋓ の正誤の組合せとして最も妥当なのはどれか。

㋐ 治療可能比(TR)は、正常組織耐容線量(TTD)を腫瘍致死線量で割った値であり、1より小
さければ放射線治療は困難である。
㋑ 分割照射法は、放射線照射後の回復が正常細胞とがん細胞で異なることを利用している。
㋒ 早期反応型組織には口腔粘膜、骨髄が属し、後期反応型組織には脳、腎臓、肺が属する。
㋓ 放射線照射によるがん細胞の再酸素化は、放射線治療における四つの重要な要素(4R)に含
まれない。

㋐ ㋑ ㋒ ㋓
1. 正 正 正 誤
2. 正 誤 誤 誤
3. 誤 正 正 正
4. 誤 正 誤 誤
5. 誤 誤 誤 正

 

 

 

 

 

正解.1

 解 説     

記述 ㋐ ~ ㋒ は妥当な記述です。

記述 ㋓ ですが
4R とは、Repair、Reoxygenation、Redistribution、Regeneration です。再酸素化が含まれます。この 4R は、分割照射の基礎理論です。㋑ の記述とも重なりますが、まず、放射線を照射すると、正常細胞の方が回復力が大きいです。照射後に休止していた細胞分裂が再開することが「再増殖」です。

また、細胞周期で放射線感受性が異なるため、分割照射を行うと、放射線抵抗性であった S 期後半の細胞が感受性が高い G2/M 期に分布するようになります。これを「再分布」と呼びます。

一方,酸素に富んだ細胞は、放射線感受性が高いため,照射によって先ず死滅します。腫瘍においては、血管からの距離が近い細胞が対応します。血管からの距離が近い細胞の死滅とともに、初めは血管からの距離が遠く、放射線抵抗性であった細胞が、分割照射の期間中に腫瘍径が縮小して血管に近づきます。その結果、酸素化されて放射線感受性が高くなります。これを再酸素化と呼び、腫瘍に特徴的な現象です。

以上より、正、正、正、誤です。正解は 1 です。

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