問 題
細胞の情報伝達システムに関する記述 ㋐~㋓ の正誤の組合せとして最も妥当なのはどれ
か。
㋐ ステロイドホルモンは標的細胞内の受容体と結合して遺伝子発現を制御する。
㋑ アドレナリンは主にイオンチャネル型受容体を介して細胞内情報伝達を行う。
㋒ 定常状態の細胞内 Cl– 濃度は、中枢神経細胞では赤血球よりも高い。
㋓ ジギタリスは、Na+,K+ – ATP アーゼを阻害し細胞内 Ca2+ 濃度を上昇させ、強心作用を
示す。
㋐ ㋑ ㋒ ㋓
1. 正 正 誤 誤
2. 正 誤 正 誤
3. 正 誤 誤 正
4. 誤 正 正 正
5. 誤 誤 正 正
解 説
記述 ㋐ は妥当な記述です。
ステロイドホルモンは、核内受容体に作用して効果を現します。一般的に、核内受容体は通常細胞内の細胞質領域に存在します。主な核内受容体は、リガンドが結合すると細胞質から核内へ移行し、転写調節因子として働きます。
記述 ㋑ ですが
アドレナリンによる情報伝達は、G タンパク質共役型である α 受容体や β 受容体によって行われます。「イオンチャネル型受容体」ではありません。よって、記述㋑は誤りです。
記述 ㋒ ですが
前提として、細胞内外のイオン濃度差について、Cl– イオンは「細胞外の方が多い」イオンです。神経細胞と赤血球に関して、それぞれの細胞の役割を考えると、情報伝達に特化した細胞と、ヘモグロビンを用いた酸素運搬に特化した細胞といえます。従って、電位差をより大きく作っているのは神経細胞ではないかと考えられます。すると定常状態の「細胞内 Cl– 濃度」は、中枢神経細胞内の方が低い(より外の方を多くして、電位差を大きくして準備しているイメージです。)と推測されます。(本番では、この記述の正誤は保留し、次で判断した方が簡単と思います。)よって、記述 ㋒ は誤りです。
記述 ㋓ は妥当な記述です。
Na+,K+ – ATP アーゼ阻害により、細胞内 Na+ 濃度上昇 → Na+ ,K+ – ATPアーゼは使えないけど Na+ 濃度は下げたいから、Na+ ,Ca2+ 交換系利用 → 細胞内 Ca2+ 濃度上昇という流れです。
以上より、正、誤、誤、正です。正解は 3 です。
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