国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H26年 問18解説

 問 題     

N2O4 ガスの解離反応に関する次の記述の ㋐ ㋑ に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。

ただし、1.01× 105 Paでの N2O4 、NO2の標準生成エンタルピーは、9.66 kJ/mol、33.85 kJ/mol であり、圧力の変化による圧平衡定数の変化は無視できるものとする。

「図のように、密閉容器に N2O4 を封入すると、N2O4 → 2NO2 の解離反応が起こり、やがて平衡状態に達する。ある温度で圧力を 1.01× 105 Pa としたところ、 N2O4 の解離度が0.20 で平衡状態となった。同じ温度で圧力を 2.02× 105 Pa とし平衡状態にすると、N2O4 の解離度は ㋐ となる。また圧力を 1.01× 105 Paに保ったまま、温度を変化させて N2O4 の解離度を ㋐ にするためには、温度を ㋑ 必要がある。」

㋐ ㋑
1. 0.07 上げる
2. 0.07 下げる
3. 0.14 上げる
4. 0.14 下げる
5. 0.56 上げる

 

 

 

 

 

正解.4

 解 説     

解離度が出てきたので、開始時の N2O4 物質量を n とおきます。

解離度 0.2 であれば、平衡状態において、N2O4 物質量 が 0.8n、NO2 物質量が 0.4n です。合計が 1.2n なので、全圧は 元の全圧の 1.2 倍です。つまり、1.01 × 105 × 1.2 ≒ 1.2 × 105 です。また、分圧はそれぞれ 全圧の 2/3、1/3 となります。

圧平衡定数を pKa とおくと、pKa = (NO2 の分圧)2/N2O4 の分圧 なので

選択肢を検討します。
解離度 0.07 だと、平衡状態において、N2O4 物質量 が 0.93n、NO2 物質量が 0.14n です。合計が 1.07n なので、全圧は 元の全圧の 1.07 倍です。つまり、2.02 × 105 × 1.07 ≒ 2.14 × 105 です。また、分圧はそれぞれ 全圧の 93/107、14/107 となります。大雑把な計算でよいので、それぞれ 7/8、1/8 に近似します。

先程と同様に計算すれば、pKa は、1/56 × 2.14 × 105 となります。明らかに、先程出た 「1/6 × 1.2 × 105」 より小さいため誤りです。

また、解離度 0.5 とすると 全圧が 分子の方が大きくなり、更に全圧も 3 × 105 になるため、pKa は明らかに先程出した 「1/6 × 1.2 × 105」 より大きくなります。解離度 0.56 であれば更に大きくなると考えられます。従って、0.07 でも 0.56 でもないため、解離度は 0.14 です。正解は 3 or 4 です。

次に、N2O4 → NO2 の反応ですが、標準生成エンタルピーが NO2 の方が大きいため、右向きに進行する際、吸熱反応です。つまり温度は下がる方向の反応です。

N2O4 の解離度を 0.20 から 0.14 にしたいということは、右向きの反応が進行しにくくなるような方向に温度を変化すればよい、ということになります。温度を上げると、より下げようとして右向きに行くだろうと考えれば、逆に温度を下げれば、温度をあげようと、左向きに平衡が動くと推測できます。㋑ は「下げる」です。

以上より、正解は 4 です。

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