脳血管疾患の病態生理、治療薬、注意点

脳血管疾患とは、脳内出血、脳梗塞、くも膜下出血などの総称です。

脳内出血とは、脳の血管が切れて、脳の中に出血することです。出血部分に血腫が形成され、血腫周辺の細胞を破壊します。細胞が破壊されると、細胞液が漏れだすため、脳圧が上昇します。脳圧が亢進すると、障害部位以外も圧迫を受け、二次的な障害が及びます。又、血腫が形成されることにより、脳虚血状態となるため、血を送ろうとして血圧が上昇します。

治療薬としては、濃グリセリン、降圧薬などを用います。グリセリンは、脳組織から水分を引き出すことを目的として投与されます。すなわち、漏れだした細胞液を脳内から吸い出すことを目的として投与されます。降圧薬は、脳内出血を原因とした、二次的な高血圧状態のコントロールを目的として投与されます。

又、脳内出血によるストレスは、胃酸分泌の亢進を引き起こすため、消化管出血につながることがあります。そのため、H2 拮抗薬が、消化管出血を抑制する目的で静脈投与されることがあります。

脳梗塞とは、脳動脈の血流障害による、脳組織の壊死です。原因に基づき、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞に分類されます。

アテローム血栓性脳梗塞とは、動脈硬化の基盤上に血栓が形成されることによりおきる脳梗塞です。アテロームとは、脂質などを含んだ細胞及び細胞の死骸から構成された蓄積物(固まり)のことである。イメージとしては、血管にできたコブです。

初期において、一過性脳虚血発作が多くの場合発症します。一過性脳虚血発作とは、片麻痺などの症状が突然発症し、24時間位内に完全に消失し回復する発作です。要は、一瞬血管が詰まって、時間が経つとなんとか血流が再開している状態です。

急性期の治療では、濃グリセリンや血栓溶解剤(t-PA,ウロキナーゼ)などが用いられます。慢性期の治療では、血栓の予防を目的に、抗血小板薬(アスピリン、シロスタゾールなど)が用いられます。

心原性脳塞栓症とは、心不全などの心疾患により心臓内でできた血栓や、心臓を経由した血栓が運ばれてきて脳の動脈に流入し、そこで血管が詰まってしまうことで発症する脳梗塞です。発生機序からもわかるように、突然おきる病気であり、一過性脳虚血発作などの前駆症状が見られにくいという特徴があります。

急性期の治療としては、濃グリセリンや、ヘパリンなどが用いられます。慢性期の治療としては、脳を含めた全身の塞栓症の再発予防を目的とし、ワルファリン(ワーファリン)やダビガトラン(プラザキサ)などが用いられます。

ラクナ梗塞とは、小さな(大きさが1.5cm以下)梗塞のことです。大きな症状がでません。しかし、色んな所にラクナ梗塞がいくつもできると、少しずつ症状が進行していきます。ラクナ梗塞の大きな原因は高血圧です。そのため治療は主に血圧のコントロールを目的とした降圧薬により行われます。又、血栓の予防に抗血小板薬もよく用いられます。

くも膜下出血とは、くも膜と軟膜の間の空間に出血がおき、脳脊髄液中に血液が混入した状態のことです。くも膜下出血では、発症時刻が明確な頭の中の衝撃が特徴です。くも膜下腔に入った血液成分が知覚神経を刺激することや、脳圧亢進が衝撃の原因です。脳の病気に共通しますが、発症が疑われる状態においては、不用意に動かさないことが重要です。出血後、髄液に混入した血液成分が脳血管を刺激するために、血管れん縮(スパスム)がおきます。これにより脳虚血が生じ、広い脳梗塞がおきることがあります。

治療薬としては、血管れん縮の抑制を目的として、オザグレルナトリウムが用いられます。又、頭蓋内圧が亢進している場合は、濃グリセリンなどが用いられます。

コメント