貧血の病態生理、治療薬、注意点

貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンの量が少ない状態のことです。酸素供給が減少することに伴い、だるさ、息切れ、ふらつきなどの症状が現れます。貧血はその成因により、赤血球産生低下、消費亢進、分布異常に分類されます。赤血球産生低下は更に、エリスロポエチン産生の低下、造血幹細胞の異常、赤血球の成熟障害に分類されます。

エリスロポエチン産生の低下をひきおこす疾患は、腎性貧血(RA:renal anemia)です。エリスロポエチンとは、腎臓で産生される糖タンパク質です。サイトカインに分類されます。骨髄の赤芽球前駆細胞に作用することにより赤血球の産生を促進します。

腎性貧血とは、腎不全によりエリスロポエチンの産生が低下したことによる貧血です。治療には、エリスロポエチンが用いられます。

造血幹細胞の異常をひきおこす疾患は、再生不良性貧血(AA:aplastic anemia)です。

再生不良性貧血とは、造血幹細胞の減少により、赤血球、白血球、血小板といった血球が減少する疾患です。先天性と後天性に分類されます。治療には、タンパク同化ステロイドや、G-CSF、シクロスポリンなどが用いられます。

赤血球の成熟障害をひきおこす疾患は、巨赤芽球性貧血鉄欠乏性貧血です。

巨赤芽球性貧血とは、さまざまな理由により、赤血球が正常に合成されず巨赤芽球が産生されてしまうために引き起こされる貧血です。

巨赤芽球が産生される理由としては、ビタミン B12 や葉酸の欠乏が知られています。これらが欠乏することにより DNA  合成が正常に行われないことが巨赤芽球が産生される理由です。ビタミン B12 の欠乏の主な原因に、内因子産生の低下があります。内因子とは、胃粘膜において産生されるビタミン B12 の吸収を促進させる物質です。内因子の欠乏によりひきおこされる貧血は特に、悪性貧血とよばれます。

葉酸欠乏の理由は様々です。ビタミン B12 欠乏による貧血と比べると頻度はそれほどではありません。薬剤による副作用などが主な原因です。

治療には、ビタミンB12 や葉酸の補充を行います。内因子欠乏による貧血の場合経口ではあまり吸収されないため、筋注で使用します。又、ビタミン B12 欠乏による巨赤芽球性貧血に対しては、葉酸を補充してしまうと神経症状が悪化することが知られており注意が必要です。

赤血球の消費亢進を引き起こす疾患は、溶血性貧血(HA:hemolytic anemia)です。溶血性貧血とは、赤血球が破壊されておきる貧血のことです。溶血とは、赤血球が破壊されることを意味します。溶血性貧血の原因は、大きく先天性と後天性に分類されます。

先天性の原因として、G-6-PD 欠損、PK 欠損、鎌状赤血球貧血などがあります。遺伝子の変異や欠損が理由です。特に鎌状赤血球貧血は、赤血球の構成要素であるヘモグロビンをコードする DNA における、たった一塩基の置換(A→U)に基づく、一アミノ酸変異(グルタミン酸→バリン)が原因である疾患として重要な意味を持つ疾患です。すなわち、遺伝子におけるごくわずかなキズが、個体の疾患レベルとして発現することがあることを示す実例という意味で重要な疾患です。

後天性の原因として、自己免疫性溶血性貧血(AIHA:autoimmune hemolytic anemia)があります。自己免疫性溶血性貧血とは、自己の赤血球に対する抗体を産生し、赤血球が破壊されることにより引き起こされる貧血です。治療には免疫抑制を目的として、ステロイドや免疫抑制剤が用いられます。

赤血球の分布異常を引き起こす疾患は、パンチ症候群などがあります。パンチ症候群とは、原因不明の疾患です。脾臓の腫れ、貧血、白血球減少などの症状を呈す疾患です。

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