薬剤師国家試験 第97回 問155 過去問解説

 問 題     

全身麻酔薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. 亜酸化窒素は、最小肺胞内濃度 (MAC) が大きく、酸素欠乏症を起こしやすい。
  2. エンフルランは、ハロタンに比べ、カテコールアミンによる心室性不整脈を誘発しやすい。
  3. プロポフォールは、GABAB 受容体を刺激し、速やかな麻酔作用を示す。
  4. チオペンタールは、代謝及び排泄が速やかなため、作用が短時間で消失する。
  5. ケタミンは、グルタミン酸 NMDA 受容体を刺激し、意識の解離をもたらす。

 

 

 

 

 

正解.1

 解 説     

最小肺胞内濃度とは、対象の半数を不動化させるのに必要な肺胞内における麻酔薬の濃度です。EC50 や、LD50 の、吸入麻酔版と考えるとよいです。値が小さい方が、少量でよく効きます。

亜酸化窒素(N2O:笑気とも呼ばれる)は、単独では完全に麻酔できないほど MAC が高い麻酔です。又、血液/ガス分配係数が小さいため、血液がすぐに麻酔ガスで飽和します。言い換えると、血液に溶けきれないガスが、肺胞内に充満しやすいです。そのため、他の麻酔ガスと比べ、肺胞内の酸素を追い出しやすいという特徴があります。よって、酸素欠乏症を起こしやすい麻酔です。実際の使用においては、麻酔ガスの吸入中止後に、100%酸素を投与します。最近では、ほぼ使用されなくなってきています。

ハロタンは、不整脈誘発をおこしやすい麻酔薬です。この点を改良したのがエンフルランなどの◯◯フルランという名前の麻酔薬です。よって、選択肢 2 は誤りです。

プロポフォールは、静脈麻酔薬の 1 つです。特徴は非ベンゾジアゼピン系であることです。又、作用時間が超短時間です。これは速やかに肝代謝を受けるからです。GABAA 受容体機能亢進により麻酔作用を示します。よって、GABAB 受容体の刺激ではないので、選択肢 3 は誤りです。

チオペンタールは、静脈麻酔薬の1つです。GABAA 受容体に結合して GABA の作用を増強させ、麻酔作用を示します。ヒスタミン遊離作用があるため、喘息患者に禁忌です。又、脂肪組織に速やかに再配分されるため、作用時間が短いという特徴があります。「代謝および排泄が速やかであるため」ではありません。選択肢 4 は誤りです。

ケタミンは、静脈麻酔薬の1つです。NMDA 受容体拮抗薬です。意識を残した麻酔に用いられます。よって、NMDA 受容体を刺激はしないので、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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