薬剤師国家試験 第98回 問60 過去問解説

 問 題     

正常妊娠に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. 受精直後から、尿妊娠反応検査が陽性となる。
  2. 妊娠の経過とともに、母体のクレアチニンクリアランスが低下する。
  3. 妊娠の経過とともに、母体の血清アルブミン値が上昇する。
  4. 妊娠の経過とともに、薬物の催奇形性に対する感受性が高くなる。
  5. 妊娠の経過とともに、母体は鉄欠乏性貧血を起こしやすい。

 

 

 

 

 

正解.5

 解 説     

尿妊娠反応検査とは、尿中に排泄されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(いわゆる妊娠ホルモン)を測定する検査です。妊娠ホルモンは、受精卵が着床してから作られ始め、検査が陽性になるまでには受精から約2週間程度の期間が必要です。

以上より、選択肢 1 は誤りです。

妊娠により、血しょう量が増加し腎臓のはたらきが増大します。つまり、多くの血しょうをろ過します。一般に、クレアチニンクリアランスは妊娠により、上昇傾向を示します。クレアチニンは、ほぼ完全に糸球体ろ過で通過し、再吸収をうけない物質です。そのため、糸球体ろ過量が増えれば、クレアチニンクリアランスも増加するためです。よって、選択肢 2 は誤りです。

糸球体ろ過量が増える結果、血中タンパク質の排泄が亢進するため、一般に血清アルブミン値は減少します。よって、選択肢 3 は誤りです。又、血しょう量が増加すると共に、赤血球も増加していきます。この際、赤血球合成において必要な、鉄分の消費量が亢進する上に血しょうの量が増えているため、見かけ上の貧血が認められることがよくあります。

妊娠の経過に伴い、催奇形性に対する感受性は低くなっていきます。これは、受精卵の分化が、妊娠の経過に伴い進んでいくためです。催奇形性に対して最も過敏な時期は、妊娠4~7週です。絶対過敏期と呼ばれます。よって、選択肢 4 は誤りです。

以上より、正解は 5 です。

参考 薬学基礎 生物学まとめ 性周期、妊娠、出産

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