薬剤師国家試験 第99回 問288-289 過去問解説

 問 題     

65歳女性。身長160cm、体重50kg。てんかんの既往があり、現在フェニトイン100mg錠を1回1錠、1日2回朝夕食後服用している。34歳時に子宮筋腫の手術を受け輸血された。55歳からC型慢性肝炎による代償期肝硬変の診断で近医に通院していた。今回、以下の薬剤が追加となった。

問288

この処方に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. 溶解する水は、80℃以上の湯を用いる。
  2. 溶解後、室温で24時間まで保存できる。
  3. 溶解後の浸透圧が高いので下痢に注意する。
  4. 主成分は芳香族アミノ酸である。
  5. この処方だけで一日に必要な熱量を摂取できる。

問289

その後、フェニトインの副作用発現が疑われたため、血漿中フェニトイン濃度を測定したところ、トラフ値が15μg/mLであった。この測定結果を踏まえて、この患者のフェニトイン用量を設定するにあたり、考慮することとして最も適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. 代謝酵素が遺伝的に欠損している。
  2. 肝初回通過効果による代謝が低下している。
  3. 血漿タンパク結合率が低下している。
  4. 消化管吸収率が低下している。
  5. 腎クリアランスが低下している。

 

 

 

 

 

正解.
問288:3
問289:3

 解 説     

問288

選択肢 1 ですが
アミノレバン EN 配合散は、水かぬるま湯に溶かしてから飲みます。タンパク質の変質を避けるため熱湯(目安は50℃以上)では、溶かしません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
溶解後は、冷蔵庫に保存します。又、10時間以内に使用するようにします。室温、24時間保存可能では、ありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は、その通りの記述です。

選択肢 4 ですが
主成分は、分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)です。芳香族アミノ酸では、ありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
1包で、約 200 cal を摂取できますが、この処方だけで、1日に必要な熱量(目安は 1500 kcal)を摂取することはできません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

問289

フェニトインの有効血中濃度は、トラフ値 10 ~ 20 μg / mL です。よって、血中濃度は有効濃度内です。つまり、選択肢 1,2,4,5 は誤りです。これらの選択肢が正解だとすれば血中濃度がもっと高いか低いかするはずです。

以上より、正解は 3 です。

補足
TDM で測定される濃度というのは「タンパク結合型」と「遊離型」を合わせた濃度です。つまり、同じ 15 μg/mL であったとしても、蛋白結合率が 90 % の場合と 60 % の場合では、遊離型の割合が 10 % と、40 % となります。

そして、組織へと移行し、薬効を示すのは遊離型の薬物なので、先の例で言うと効き目を示す薬物濃度は4倍違うということになります。このような、タンパク結合率による違いはそもそも薬物のタンパク結合率が高いほど違いが大きくでます。具体例を通じて説明します。

ある薬物の通常の蛋白結合率が 10 % で、肝機能の低下に伴う血中アルブミン量の減少等により蛋白結合率が 5 % になった場合を考えます。この時、遊離型の割合は、 90 % から 95 % になったわけですが効き目を示す薬物濃度としては 1.05 倍になったに過ぎません。

本問のフェニトインと、上に述べた架空の薬との違いに明らかなようにそもそもの薬物のタンパク結合率によってタンパク結合率が変化した場合の影響が大きく異なります。ちなみに、フェニトインは、タンパク結合率の高い TDM 対象薬として知られており、実務においてはアルブミン値による血中濃度補正が行われています。 補足 終わり

コメント