薬剤師国家試験 第99回 問286-287 過去問解説

 問 題     

70歳男性。1ヶ月前から息切れが出現し、病院を受診した。心機能低下を指摘され、慢性心不全と診断された。以下の内容の処方せんを持って保険薬局を訪れた。

問286

本症の重症度の指標として適切な検査項目はどれか。1つ選べ。

  1. 血清カリウム値
  2. 血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値
  3. 血清尿酸(UA)値
  4. 血清クレアチニン(Cr)値
  5. 血清クレアチンキナーゼ(CK)値

問287

上記処方せんに対する疑義照会の内容として正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. 処方1は、心不全に用いる初回投与量としては過量であること。
  2. 処方2は、心不全に用いる初回投与量としては過量であること。
  3. 処方3は、心不全に用いる初回投与量としては過量であること。
  4. 処方1、2は、心不全の患者では併用禁忌であること。
  5. 処方3は、心不全の患者には就寝前の投与が推奨されていること。

 

 

 

 

 

正解.
問286:2
問287:2

 解 説     

問286

慢性心不全の重症度の指標は BNP です。BNP とは、心臓(おもに心室)で合成され、分泌されるホルモンです。

以上より、正解は 2 です。

問287

処方 1 のエナラプリルは ACE 阻害剤です。降圧薬です。慢性心不全においては心臓が元気ない → もっと血をいっぱい送んなきゃ! → 交感神経系や RAA(レニン・アンギオテンシン) 系が活性化 → 無理しちゃうから、進行性の左室拡大と収縮力の低下(いわゆるリモデリング)が生じる → 心不全の悪化等のイベントが生じる という流れが進行していきます。

そこで、RAA 系 の抑制を機序に有する ACE 阻害剤が用いられます。大規模臨床試験でも、効果が確認されています。用法・容量は、通常、成人は 5~10 mg 1 日 1 回です。ただし、腎障害を伴ったり、利尿薬服用中ならば 2.5 mg からの服用開始が望ましいとされています。つまり、過量では、ありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

処方 2 のビソプロロール(メインテート)は β 遮断薬です。心臓の機能を休ませることで心臓の負担を軽くし、予後の改善に用いられることがあります。

用法・用量が、効能により大きく変わる薬です。慢性心不全の治療に用いる場合は 0.625 mg → 1.25 mg → 2.5mg → 3.75mg / 5mg と、必ず段階的に増量して忍容性(副作用の有無・程度)を確認しつつ用います。いきなり 5mg では、使用しません。又、処方1との併用禁忌ということはありません。よって、選択肢 2 は正しい記述です。

選択肢 4 は誤りです。
処方 3 のフロセミド(ラシックス)はループ利尿薬です。心不全による血流循環の不全 → うっ血、むくみ といった症状に対して、尿排出量の増加による体内の血液循環量の抑制を期待して用いられます。体内において、尿≒血液 なので、尿量増加は体内の血液循環量減少と、ほぼ同じ意味で考えることができます。

一般的に、利尿薬は寝る前に服用すると、夜間に尿が近くなり眠れなくなってしまうため、朝食後などに使用されます。通常 1日1回 40 mg ~ 80mg ですが、適宜増減され初回は 20 mg からということもあります。少なくとも、過量ではありません。よって、選択肢 3 及び 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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