99回薬剤師国家試験 問290-291解説

 問 題     

75歳男性。アレルギー性鼻炎のため耳鼻科を受診後、保険薬局で以下の処方せんの調剤薬を受け取り、夕方から服薬を開始した。翌日午前中に、尿が出にくくなったと訴えて、この薬局に相談に来た。

問290

薬剤師は処方薬による副作用を疑った。この薬局の薬剤師が担当医へ提案すべき内容として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. 処方1を中止。
  2. 処方1をクロルフェニラミン製剤へ変更。
  3. 処方2を中止。
  4. 処方2を減量。
  5. 処方3を中止。

問291

この患者が病院を受診した。直腸診で、弾性があり硬い腫瘤が直腸前壁に触知された。最も疑われる疾病と、当該疾病の診断が確定したときの治療薬の組み合わせとして、最も適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. 直腸がん    フルオロウラシル
  2. 直腸がん    イリノテカン塩酸塩水和物
  3. 前立腺肥大症  デュタステリド
  4. 前立腺肥大症  フルタミド
  5. 腎不全     シラザプリル水和物
  6. 腎不全     ロサルタンカリウム

 

 

 

 

 

正解.
問290:1
問291:3

 解 説     

問290

尿が出にくくなったという訴えから、抗コリン作用による副作用が疑われます。処方の中で、抗コリン作用を有するのは、処方 1 の クレマスチンです。

選択肢 2 ですが
クロルフェニラミン製剤にはやはり抗コリン作用があるため、変更しても意味がないと考えられます。

以上より、選択肢 1 が正解です。

問291

疑われる疾病としては、直腸がんや前立腺肥大症が考えられます。選択肢 5,6 は誤りであると考えられます。

直腸がんの治療薬は、5-FU がキードラッグです。代表的なレジメンは、FOLFOX (5-FU+レボホリナート+オキサリプラチン)や FOLFILI(5-FU+レボホリナート+イリノテカン)です。そのほかに、ベバシズマブ(アバスチン)やセツキシマブ(アービタックス)といった、分子標的薬も用いられます。

前立腺肥大症には、α1 遮断薬や、5α還元酵素阻害薬などが用いられます。デュタステリド(アボルブ)は、代表的な前立腺肥大症治療薬です。5α還元酵素阻害薬の一種です。

ちなみに、フルタミド(オダイン)は、前立腺がんの治療薬です。非ステロイド性の、抗アンドロゲン(男性ホルモン)薬です。よって、選択肢 4 は誤りです。

これらのことから
選択肢 1,2,3 が正解の候補と考えられます。

そして、この中から1つを選べ というのであれば
・患者の年代が 75 歳、男性であること(前立腺肥大 は、70歳では、約 80 % に見られます。ただし、全てが治療を必要とするわけではありません。)
・「直腸がんの治療薬」というのは、1種類ではなくレジメンとして表現されること

を考慮すると、選択肢 3 がより適切であるといえます。

以上より、正解は 3 と考えられます。

コメント