問 題
64歳男性。不安定狭心症のため、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)を受けた。その後の治療薬として新たに以下の薬剤が処方された。
問254
処方された薬剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 処方された用量のアスピリンは、血管内皮細胞のプロスタグランジンI2生成よりも、血小板のトロンボキサンA2生成をより強く阻害する。
- アスピリンは、ロスバスタチンによる筋肉痛を緩和する目的で処方されている。
- チクロピジンの活性代謝物が遮断するADPのP2Y12受容体は、Gqタンパク質共役型受容体である。
- チクロピジンの副作用として、血栓性血小板減少性紫斑病、無顆粒球症及び重篤な肝障害がある。
- ロスバスタチンは、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)の生合成を阻害し、血清中の低比重リポタンパク質(LDL)量を減少させる。
問255
この患者への説明および指導の内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- アスピリン腸溶錠は、術後の経過が良ければ、一週間程度で中止します。
- チクロピジン塩酸塩錠には、狭くなった血管を拡げる作用があります。
- 定期的に血液検査を必要とする薬剤が処方されていますので、2週間後に受診してください。
- 筋肉痛や脱力感が起こることがありますが、一時的なものなので心配ありません。
- 出血しやすくなるので、歯肉や鼻などからの出血があれば受診してください。
正解.
問254:1, 4
問255:3, 5
解 説
問254
選択肢 1 は、正しい選択肢です。
選択肢 2 ですが
低用量アスピリンは抗血栓作用を期待して用いられます。ちなみに痛み止めとしては、通常成人は 1回 0.5 ~ 1.5g 1日 1.5 ~ 4.5g で 使用されます。よって、選択肢 2 は誤りです。
補足
スタチン系を服用した時の筋肉痛は、横紋筋融解症の初期症状が疑われるため痛み止めで止めるものではない と考えて選択肢が誤りと判断してもよい、と思います。
選択肢 3 ですが
P2Y12 受容体は、Gi タンパク質共役型です。Gq では、ありません。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、正しい選択肢です。
選択肢 5 ですが
ロスバスタチンは、HMG-CoA 還元酵素阻害薬です。すなわち HMG-CoA を、メバロン酸に変換する酵素を阻害する薬です。従って、HMG-CoA の生合成を阻害するわけでは、ありません。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1,4 です。
問255
選択肢 1 ですが
アスピリンは、予防的な血栓形成の抑制を期待して投与されます。そのため原則としてアスピリンの服用は継続します。経過が良いからといって一週間程度で中止するわけでは、ありません。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
チクロピジンは、血小板凝集を阻害する薬です。血管拡張薬では、ありません。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は、正しい選択肢です。
選択肢 4 ですが
チクロピジンは肝障害、顆粒球減少、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)など重篤な副作用が多く知られています。そのため、初期症状には特に注意が必要です。
筋肉痛は、顆粒球減少に伴う風邪の症状等として、脱力感は、TTPに伴う症状等として 注意喚起が必要です。このような症状が見られた場合はすぐに服薬を中止した上で、病院へ行くように指導します。一時的なもので、心配ない という指導は適切では、ありません。よって、選択肢 4 は誤りです。
補足
ちなみに、チクロピジンによる重大な副作用の 約 9 割が、服薬開始後 2 ヶ月以内に発現することが知られています。この期間は2週に1回の血液検査の実施が副作用発見のため重要です。(そのため、原則として1回の処方せんで、2週間分が処方されます。)
選択肢 5 は、正しい選択肢です。
以上より、正解は 3,5 です。
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