問 題
57 歳女性。身長 161 cm、体重 60 kg、体表面積 1.562 m2。アルコール過敏症あり。
HER2 陽性の再発乳がんと診断され、多発骨転移及びリンパ節転移を認めたため、外来で抗 HER2 療法を含む化学療法(トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドセタキセル)が以下のレジメンで開始されることとなった。
併せて処方 1 も開始されることになった。この患者に対するレジメン及び処方について、カンファレンスが開かれた。
(初回コース:トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドセタキセル療法レジメン)

(注:ドセタキセルはエタノール無添加の製剤を使用)
| デノスマブ(遺伝子組換え)皮下注(120 mg/1.7 mL) | 1 バイアル |
| 1 回 120 mg 皮下注射 |
問264
カンファレンスで薬剤師が説明する内容として適切なのはどれか。 2 つ選べ。
- 2 コース目以降のトラスツズマブの投与量は 1 コース目より増量すること。
- デノスマブによる副作用として、しびれが増す可能性があること。
- 壊死起因性抗がん薬が含まれるため、投与後の血管外漏出時には局所処置を行うこと。
- 1 コース目のペルツズマブ投与時間は短縮できること。
- このドセタキセル製剤は禁忌になるため、他の薬剤に変更すること。
問265
この患者に使用される薬物の作用機序で、副作用の発現にも関連しているのはどれか。 2 つ選べ。
- 神経細胞の軸索輸送に関わる微小管の脱重合を阻害する。
- DNA トポイソメラーゼⅠを阻害し、アポトーシスを誘導する。
- B 細胞上の CD20 に結合し、B 細胞の機能を低下させる。
- RANKL(NF-κB 活性化受容体リガンド)に結合し、破骨細胞の分化を阻害する。
- 血管内皮細胞上の血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)に結合し、血管新生を阻害する。
問264:2, 3
問265:1, 4
解 説
問264
選択肢 1 ですが
2コース目以降のトラスツズマブ投与量は、1 コース目よりも「減量」します。増量ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
デノスマブは、RANKL という破骨細胞の形成、機能などを調節するタンパク質を標的としたモノクローナル抗体です。
骨は人体におけるカルシウムの貯蔵庫です。骨からカルシウムを血中に取り出す破骨細胞の機能を抑制するので、注意すべき副作用が「低カルシウム血症」です。そして、デノスマブによる低カルシウム血症の初期症状として手足のしびれが生じることがあります。
選択肢 3 は妥当です。
ドセタキセルは、血管外漏出が少量であっても重度の組織障害や潰瘍、壊死を引き起こすおそれがある 壊死起因性抗がん薬 に分類されます。漏出時には適切な局所処置が必要です。
ちなみに
血管外漏出に関して抗がん剤は大きく3つに分類されます。
1:壊死起因性抗がん薬:ビシカント薬剤(ドキソルビシンなど)
=血管外へ漏れ出た場合、水疱や潰瘍をもたらしうる薬剤
2:炎症起因性抗がん薬:イリタント薬剤(イリノテカンなど)
=注射部位や周囲、血管に沿って痛みや炎症をもたらしうる薬剤
3:非壊死起因性抗がん薬(オプジーボなど)
=漏出しても、組織が傷害を受ける可能性が低い薬剤
選択肢 4 ですが
ペルツズマブの投与時間を短縮できるのは、2 コース目以降です。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
エタノール無添加のドセタキセル製剤が選択されており、アルコール過敏症の患者にもそのまま使用可能です。
以上より、問 264 の正解は 2,3 です。
問265
選択肢 1 は妥当です。
ドセタキセルの作用機序です。関連する副作用は末梢神経障害です。
選択肢 2 ですが
DNA トポイソメラーゼⅠ阻害薬 (イリノテカンなど) の作用機序です。この患者に使用されていません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
CD20 阻害薬 (リツキシマブなど) の作用機序です。この患者に使用されていません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
デノスマブの作用機序です。関連する副作用は低カルシウム血症です。
選択肢 5 ですが
VEGFR 阻害薬 (ベバシズマブなど) の作用機序です。
ちなみに
ペルツズマブは、抗 HER2 ヒト化モノクローナル抗体です。
以上より、問 265 の正解は 1,4 です。

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