薬剤師国家試験 第110回 問91 過去問解説

 問 題     

理想気体からなる閉じた系における熱力学第一法則に関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. 定温過程において、系に加えられた熱量はすべて系がする仕事になる。
  2. 内部エネルギー変化は、系に加えられた熱量と系が外界からされた仕事の和で表される。
  3. 断熱過程において、系の体積が増加すると内部エネルギーも増加する。
  4. 内部エネルギー変化は経路関数である熱と仕事からなり、それ自体も経路関数である。
  5. 系が外界に対してする仕事は、不可逆過程の方が可逆過程より大きい。

 

 

 

 

 

正解.1, 2

 解 説     

気体に熱が加えられた時、その気体の内部エネルギーの増加分 ΔU は、加えられた熱エネルギー Q と気体が外部からなされた仕事 W の和に等しい、と表されることもあります。式で表すと、ΔU= Q + W です。


選択肢 1 は妥当です。

「系が 外部へ する仕事」となっているので、熱力学第一法則より 内部エネルギー変化 ΔU = 熱 - 外部へする仕事・・・(1) と少し式を変換してから考えます。

定温だから温度変化がありません。言い換えれば、内部エネルギー変化 ΔU = 0 です。従って、熱 = 系が外部へする仕事です。


選択肢 2 は妥当です。

熱力学第一法則の通りです。


選択肢 3 ですが

断熱過程なので、Q = 0 です。そして系の体積が増加したということは、系が 外部へ する仕事があるということです。

選択肢 1 の解説で述べた式 (1) を用いて考えます。Q = 0 を代入すれば ΔU = 0 - 外部へする仕事 となります。ΔU の符号は 負です。従って、内部エネルギーは 減少 します。増加ではありません。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 ですが
系の状態が定まっても、反応経路に依存し、一義的に定まらない物理量を 経路関数 といいます。経路関数の例としては、仕事や熱があげられます。

一方、系の状態が定まると、反応経路によらず一義的に定まる物理量を 状態関数 といいます。状態関数の例は 内部エネルギーです。「内部エネルギー変化は・・・それ自体も経路関数」ではありません。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 ですが

不可逆過程には、摩擦や熱損失といったエネルギーロス (不可逆的な仕事) が含まれます。従って、系が外界に対してする仕事は、ロスが含まれない可逆過程の方が大きいと考えられます。選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 1,2 です。

類題 107-93
https://yaku-tik.com/yakugaku/107-093/

参考 熱力学第一法則
https://yaku-tik.com/yakugaku/bk-2-2-5/

参考 状態関数
https://yaku-tik.com/yakugaku/bk-2-2-2/

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