問 題
62歳男性。3年前、階段を昇る時に息切れを感じるようになり受診したところ、左室肥大と肺うっ血を認め、慢性心不全と診断された。
処方1~処方3で治療されていたが、慢性心不全の増悪により入院した。その後、処方4を追加して病態が安定したため、退院することになった。現在の検査値等は以下のとおりである。
(検査値)
血圧 120/82mmHg、心拍数 84拍/分、AST 24IU/L、ALT 16IU/L、BUN 18mg/dL、血清クレアチニン値 0.9mg/dL、Na 145mEq/L、K 2.9mEq/L、Cl 102mEq/L、血清BNP 410pg/mL、左室駆出率 EF33%
問252
この患者に対する副作用モニタリングとして、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 腎機能検査値は基準値内と判断する。
- 血清電解質 (Na、K、Cl) 値は、いずれも基準値内と判断する。
- 徐脈と判断する。
- 今後、処方 3 の薬剤による血清ナトリウム値の上昇に注意する。
- 今後、処方 1 や処方 4 の薬剤により血清カリウム値が上昇しすぎないか注意する。
問253
この患者に追加された処方4の薬物の作用として、適切なのはどれか。1つ選べ。
- 心臓のアドレナリンβ1受容体を遮断して、BNP値を低下させる。
- アンジオテンシン変換酵素を阻害して、心筋の線維化を抑制する。
- 心筋に直接作用して心収縮力を高めて、左室駆出率を改善する。
- ヘンレ係蹄上行脚においてNa+とCl-の再吸収を抑制して、むくみを改善する。
- 遠位尿細管及び集合管においてアルドステロン受容体を遮断して、尿中へのK+の排泄を抑制する。
正解.
問252:1, 5
問253:5
解 説
問252
選択肢 1 は妥当です。
BUN、血清クレアチニン値 基準値内です。(参考 病態・薬物治療学まとめ 代表的な腎機能検査)。
選択肢 2 ですが
K 値が低いです。(本試験時点で基準値 3.5 ~ 5.0 です。)。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
心拍数 を見ると、徐脈ではありません。脈拍はおおよそ毎分50~100回が正常範囲です。50回以下は徐脈、100回以上を頻脈といいます。(参考 病態・薬物治療学まとめ 代表的なバイタルサイン)。
選択肢 4 ですが
処方3のフロセミドは、ループ利尿薬です。Na+ – K+ - 2Clー 共輸送系を抑制します。この結果、「Na+ 等の再吸収抑制 → Na+ 等がより多く溶けているので浸透圧上昇、水分再吸収抑制 → 排出される尿量が増加」という流れとなります。
つまり、ループ利尿薬により「Na+ が再吸収されず、多く尿として排出」なので、血清ナトリウムは「低下」することが予想されます。「上昇に注意」ではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
以上より、問 252 の正解は 1,5 です。
問253
エプレレノンは、 K 保持性利尿薬です。
アルドステロン受容体を遮断し、利尿作用を示します。(105-160)。
以上より、問 253 の正解は 5 です。
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