代表的な腎機能検査

腎機能検査は、大きく2つに分類されます。
1つは血清生化学的検査です。この検査により、腎機能に関する検査項目として、血中尿素窒素(BUN:blood urea nitrogen)、血清クレアチニン(Scr: Serum creatinine)、クレアチニンクリアランス(CLcr: creatinine clearance)等がわかります。

もう1つは尿検査です。この検査により、腎機能に関する検査項目として、尿タンパク、α1,β1-ミクログロブリン、N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(NAG:N-acetyl-β-D-glucosamidase)、尿ウロビリノーゲン等がわかります。

BUN は、血中の尿素の量を測定し、その中の窒素量として表したものです。尿素の組成式が CH4N2O で、分子量が 60 、含まれる窒素の分子量が 28 なので、尿素量の 28/60 の量が BUN となります。基準値は、BUN:8~20mg/dLです。

BUNの値が高いということは、血中の尿素の量が多いということです。血中尿素が多くなる一番の原因は、腎臓における尿中への尿素排泄の滞りです。腎臓における尿中への尿素排泄が滞るということは、言い換えれば腎機能が低下しているということになります。よって、BUN 高値では、腎機能の低下が疑われます。

血清クレアチニンは、筋肉において合成される物質の分解最終産物です。このため、血清クレアチニン量は筋肉量に比例するため、男女において基準値が異なるという特徴があります。基準値は、Scr(男性):0.6~1.1mg/dL、Scr(女性):0.4~0.8mg/dL です。

血清クレアチニンは、腎糸球体でろ過され、再吸収されずに尿中に排泄されます。つまり、血清クレアチニンが高いということは、腎糸球体におけるクレアチニンのろ過量が少ないということを示唆します。腎臓をろ過装置とすれば、腎糸球体はろ紙にあたります。ろ過量が少ないというのは、このろ紙が目詰りをおこしているイメージです。このろ過量のことを GFR (Glomerular Filtration Rate)と呼びます。Scr は、GFR の指標としてよく用いられます。

クレアチニンクリアランスは、血中からクレアチニンがどの程度の速度で尿中に排出されるかを表す数値です。簡易的に、採血のみでクレアチニンクリアランスを推定する式である Cockcroft & Gault (コッククロフト・ゴールト)式がよく使われます。式は以下になります。

※Scr:血清クレアチニン、Age:年齢、Weight:体重
※上の式は男性。女性は上の式に0.85をかけます。筋肉量を反映させる係数が0.85です。

基準値は、CLcr (男性):90~120mL/min、CLcr (女性):80~110mL/min です。CLcr が低いということは、GFR が低下しているということを示唆します。

Scr と CLcr の違いは何かというと、腎機能低下に対する感度の違いです。なぜ Scr からわざわざ CLcr を推定するかといえば、CLcr の方が、腎機能の低下をより敏感に反映することが知られているからです。

尿タンパクは、尿に含まれるタンパクで、主にアルブミンとグロブリンです。健康診断で、尿を検査紙にかけて色の変化を見る検査が馴染み深いかと思います。検査紙を用いることで測定されるのは尿中アルブミンです。

アルブミンが尿中に高値であるということは、腎臓におけるタンパク質再吸収能が低下していることが示唆されます。とはいえ、尿タンパクが出ていなくても、腎機能が低下していることもあります。そこで、尿中の微量グロブリンというタンパク質を測定することにより、腎機能の低下をより早期に発見することが可能になっています。特に α1-ミクロブロブリンや、β2 -ミクログロブリンというタンパク質が、腎臓の尿細管の傷害を鋭敏に反映する指標として知られています。基準値(検査紙法による)は、緑色より薄い色です。

NAGは、尿細管細胞中に含まれる酵素です。尿細管傷害の検出に有効です。基準値は、NAG:7U/L以下です。

尿ウロビリノーゲンは尿中のウロビリノーゲンです。ウロビリノーゲンとは、直接型ビリルビンの代謝物です。腸内細菌により、直接型ビリルビンは、ウロビリノーゲンに代謝されます。

ウロビリノーゲンは、大部分は便と共に排出されますが、腸肝循環を経て、肝臓で処理されなかった一部のウロビリノーゲンが腎臓を介して尿中に排泄されます。よって、肝臓の機能が落ちると、その分腎臓を介して尿中に排泄されるウロビリノーゲンの量が増加します。これは、濃い尿が出るという症候として現れます。

尿ウロビリノーゲンの値が低い時は、ウロビリノーゲンの原料であるビリルビンが正常に産生されていないことが疑われます。すなわち、胆道閉塞などでビリルビンが腸内に正常に排泄されず、原料がないため腸内細菌による代謝を受けて産生されるウロビリノーゲンの量が少ないということを示唆します。基準値(試験紙法)は、±です。

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