薬剤師国家試験 第106回 問135 過去問解説

 問 題     

発がん物質の代謝活性化に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. o-トルイジンは、シトクロムP450によりヒドロキシルアミン体となり、さらにアセチル化反応により活性化される。
  2. サイカシンは、ベンジルアルコール型代謝物のエステルに活性化される。
  3. スチレンは、シトクロムP450によりスチレンオキシドに活性化される。
  4. ビス(クロロメチル)エーテルは、グルタチオン抱合により活性化される。
  5. ナイトロジェンマスタードは、酸化的代謝反応で生じるアルキルジアゾヒドロキシドに活性化される。

 

 

 

 

 

正解.1, 3

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
o-トルイジンについての記述です。o-トルイジンは、別名 2-メチルアニリンです。(構造は 102-131 で既出)。

選択肢 2 ですが
サイカシンは、体内で β – グルコシダーゼによって代謝されたのちメチルカチオンを生じます。(98-123)。エステルに活性化されるわけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
スチレンについての記述です。

選択肢 4 ですが
グルタチオン抱合のメカニズムは、トリペプチドであるグルタチオンのチオール基が求核攻撃するメカニズムです。そのため、基質の「求電子性」の高い、電子密度の低い部分に結合します。(102-130)。ビス(クロロメチル)エーテルは、名前から ClーCH3 ーOーCH3 ーCl と構造がわかります。グルタチオン抱合は受けにくそうです。

さらにグルタチオン抱合は代謝第Ⅱ相反応の1つで、水溶性が増し、抱合を受けた代謝物は原則として速やかに体外への排出が期待されます。(105-43)。これらの知識をふまえると、「発がん物質の代謝活性化メカニズム」としては不適切と推測できるのではないでしょうか。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ナイトロジェンマスタードは、それ自身が DNA と反応する一次発がん物質です。(101-132)。代謝活性化不要です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1,3 です。

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