問 題
腎尿細管分泌過程に飽和がみられる薬物において、投与量の増大に伴い値が低下するのはどれか。1つ選べ。
- 血中濃度時間曲線下面積/投与量
- 腎クリアランス
- 消失半減期
- 平均滞留時間
- 血中非結合形分率
解 説
「尿細管分泌に飽和」 ということは、血中から尿中への薬物移行が少なくなる→血中の薬物濃度が上昇する、ということです。それをふまえて各選択肢を検討します。
選択肢 1 ですが
飽和が見られるまでは、投与量と血中濃度時間曲線降下面積(AUC)は比例します。そのため、AUC/投与量 は変化しないと考えられます。
その後、飽和が見られると、投与量が増えて、血中濃度時間曲線降下面積(AUC)は、今までよりもさらに増えます。従って、全体は増加すると考えられます。
CL = D/AUC を覚えていれば簡単かもしれません。CL が一定ならば、D/AUC は一定です。逆数も当然一定です。尿細管分泌に飽和が見られれば、CL↓、D/AUC↓ なので、逆数であるAUC/D ↑です。
選択肢 2 は、正しい選択肢です。
クリアランスとは、薬物を取り除く能力を示す数値です。尿細管分泌が飽和すれば、血中から薬物を取り除く能力が落ちます。従って減少するとわかります。
腎CL=「糸球体ろ過 CL」 + 「分泌 CL」 - 「再吸収 CL」を思い出してもよいと思います。分泌 CL が 0 になるので、全体として CL が減少します。
選択肢 3 ですが
なかなか血中から薬物が消失しなくなる ので、消失半減期は長くなる と考えられます。これも T1/2 ≒ 0.7/k を考えて、消失速度定数 k ↓なので、T1/2↑ と判断することもできます。
選択肢 4 ですが
平均滞留時間とは、薬物が体内に滞留する平均時間です。薬物の血中から尿中への移行が少なくなれば結果的に、尿中排泄による体外への排出量が少なくなります。従って、体内に滞留する時間は長くなると考えられます。
選択肢 5 ですが
血中非結合形分率は特に変化しないと考えられます。少なくとも、血中薬物濃度が増えているのだから薬物-タンパク質 結合形が減る というのはおかしいと判断するとよいです。
以上より、正解は 2 です。
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