薬剤師国家試験 第102回 問47 過去問解説

 問 題     

腎尿細管分泌過程に飽和がみられる薬物において、投与量の増大に伴い値が低下するのはどれか。1つ選べ。

  1. 血中濃度時間曲線下面積/投与量
  2. 腎クリアランス
  3. 消失半減期
  4. 平均滞留時間
  5. 血中非結合形分率

 

 

 

 

 

正解.2

 解 説     

「尿細管分泌に飽和」 ということは、血中から尿中への薬物移行が少なくなる→血中の薬物濃度が上昇する、ということです。それをふまえて各選択肢を検討します。

選択肢 1 ですが
飽和が見られるまでは、投与量と血中濃度時間曲線降下面積(AUC)は比例します。そのため、AUC/投与量 は変化しないと考えられます。

その後、飽和が見られると、投与量が増えて、血中濃度時間曲線降下面積(AUC)は、今までよりもさらに増えます。従って、全体は増加すると考えられます。

CL = D/AUC を覚えていれば簡単かもしれません。CL が一定ならば、D/AUC は一定です。逆数も当然一定です。尿細管分泌に飽和が見られれば、CL↓、D/AUC↓ なので、逆数であるAUC/D ↑です。

選択肢 2 は、正しい選択肢です。
クリアランスとは、薬物を取り除く能力を示す数値です。尿細管分泌が飽和すれば、血中から薬物を取り除く能力が落ちます。従って減少するとわかります。

腎CL=「糸球体ろ過 CL」 + 「分泌 CL」 - 「再吸収 CL」を思い出してもよいと思います。分泌 CL が 0 になるので、全体として CL が減少します。

選択肢 3 ですが
なかなか血中から薬物が消失しなくなる ので、消失半減期は長くなる と考えられます。これも T1/2 ≒ 0.7/k を考えて、消失速度定数 k ↓なので、T1/2↑ と判断することもできます。

選択肢 4 ですが
平均滞留時間とは、薬物が体内に滞留する平均時間です。薬物の血中から尿中への移行が少なくなれば結果的に、尿中排泄による体外への排出量が少なくなります。従って、体内に滞留する時間は長くなると考えられます。

選択肢 5 ですが
血中非結合形分率は特に変化しないと考えられます。少なくとも、血中薬物濃度が増えているのだから薬物-タンパク質 結合形が減る というのはおかしいと判断するとよいです。

以上より、正解は 2 です。

参考 薬剤学まとめ 腎クリアランス

コメント