問 題
70歳女性。腰痛を訴え来院した。骨密度が低下していることが明らかになり骨粗しょう症と診断され、以下の薬剤が処方された。
1年経過後の腰椎骨密度測定値は、若年成人平均値の65%で、半年前の値より3%下がっていた。さらに椎体骨折が1か所認められ、腰痛症状も改善されていなかった。そこで、以下の処方に変更となった。
問215
処方1のアレンドロン酸錠の服薬指導で誤っているのはどれか。2つ選べ。
- 胃腸障害を起こしやすいので、服用後なるべく早く食事をとってください。
- カルシウム、マグネシウム等の含量の高いミネラルウォーターでは飲まないようにしてください。
- この錠剤は溶け易いので、少量の水で飲んでも構いません。
- 服用後少なくとも30分は横にならないでください。
- 服用を忘れて、朝食をとってしまった時は、翌朝の起床時に飲んでください。
問216
処方3のテリパラチド製剤に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 使用開始後も冷蔵庫に入れて保存する。
- 注射は腹部又は大腿部に行う。
- 本剤はカルシトニン製剤である。
- 骨粗しょう症以外の代謝性骨疾患の患者にも使用できる。
問217
骨粗しょう症は、体内のカルシウム代謝と深く関わっている。生体のカルシウムイオン(Ca2+)濃度の調節に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 細胞膜にはATPの加水分解エネルギーを用いて細胞外にCa2+を排出するCa2+ポンプが存在する。
- 腸管からのCa2+の吸収は、カルシトリオール(活性型ビタミンD3)により促進される。
- カルシトニンは骨吸収を促進し、血漿中へのCa2+遊離を増加させる。
- 腎臓におけるCa2+の再吸収は、副甲状腺(上皮小体)ホルモンによって抑制される。
正解.
問215:1, 3
問216:1, 2
問217:1, 2
解 説
問215
アレンドロン酸(フォサマック、ボナロン)は、ビスホスホネート製剤です。破骨細胞の活性を抑制することにより骨吸収を抑制します。使用上の注意として、食道などに付着したままだと局所刺激症状をおこすおそれがある点があります。そのため、コップ1杯程度の、多めの水での服用を指導します。又、服用後、最低30分は、横にならないようにさらに、食事等を行わないように指導します。(これらは、食道などへの薬の残留を防ぐためです。又、胃に何か入っていると、吸収が悪くなるためです。)
週1回服用でよく、飲み忘れて食事をとった場合は翌日に服用すればよいです。金属イオンとキレート形成するため、サプリメントや硬度の高いミネラルウォーターなどでは服用しないように注意します。
以上より、正解は 1,3 です。
又、本問の解答には必要ないのですが、漫然と長期服用(3年以上)することのベネフィットに関してはまだ議論がまとまっていない状態であり臨床的な研究の動向に注目しておく必要がある薬の一つである、といえます。
参考)
代表的な臨床試験として、FIT、VERT、HORIZON
長期投与の効果について、FLEX 研究があります。
問216
テリパラチドは、副甲状腺ホルモン(パラトルモン)の活性部分 を精製したペプチド製剤です。内服では吸収されないため、注射剤です。骨形成促進剤の一種です。使用後は、速やかに冷蔵庫で保存します。注射を行うのは、腹部 か 大腿部です。骨折の危険性の高い骨粗しょう症に対してのみ効能・効果が認められています。(2014.3 時点)
以上より、正解は 1,2 です。
問217
選択肢 1,2 は、その通りの記述です。
選択肢 3 ですが
カルシトニンは、血中 Ca 濃度が上昇すると放出されるホルモンです。破骨細胞に存在する、カルシトニン受容体に作用し骨吸収を抑制 → 血中 Ca 濃度を低下させます。骨からの、Ca 流出を防ぐことを期待して用いられる骨粗しょう症治療薬の一つです。(ウナギやサケ 由来の、より作用の強いカルシトニンが、医薬品としては用いられます。)よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
副甲状腺ホルモン(=パラトルモン)により、血中の Ca 濃度は上昇します。この Ca 濃度の上昇は、腎臓における Ca の再吸収を亢進すること等により引き起こされます。よって、選択肢 4 は誤りです。
以上より、正解は 1,2 です。
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