薬剤師国家試験 第99回 問218-219 過去問解説

 問 題     

57歳男性。身長165cm、体重70kg。20歳代前半よりほぼ毎日、日本酒にして1日3合(540mL)程度の飲酒を続けている。1年ほど前に下肢のむくみを自覚し、近医を受診した結果、肝機能障害を指摘されたが放置していた。

最近、全身の倦怠感を強く感じるようになり来院した。非代償性肝硬変と診断され、以下の薬剤が処方された。

問218

この処方薬による副作用について、患者に対する薬剤師の説明内容として適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. めまい等が現れる場合があるので、自動車運転、高所作業又は危険を伴う機械の操作などには十分注意してください。
  2. 急に胃のあたりがひどく痛む場合があるので、その際には直ちに医師又は薬剤師に申し出てください。
  3. しゃべりにくい、胸の痛み、呼吸困難、片方の足の急激な痛みや腫れ等の症状がみられる場合があるので、その際には直ちに医師又は薬剤師に連絡してください。
  4. から咳、息苦しさ、息切れ等が生じる場合があるので、その際には直ちに医師又は薬剤師に連絡してください。
  5. 手足のこわばりやしびれ、脱力感、筋肉の痛み等が現れる場合があるので、その際には直ちに医師又は薬剤師に連絡してください。

問219

肝臓の機能と非代償性肝硬変の病態に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 分枝鎖アミノ酸は、主に肝臓で代謝される。
  2. アルブミン産生の低下は、浮腫の誘因となる。
  3. アンモニアから尿素への変換の低下は、肝性脳症の誘因となる。
  4. ビリルビンからヘモグロビンへの変換が抑制されると、黄疸が生じる。
  5. ヘパリン合成が低下すると、出血傾向となる。

 

 

 

 

 

正解.
問218:1
問219:2, 3

 解 説     

問218

肝性浮腫の改善→処方1,2、高アンモニア血症の改善→処方3~5と考えられます。

肝性浮腫は、肝臓の働きの一つであるアルブミン(水分保持能あり)というタンパク質の合成機能が低下 → 血液中の、水分保持能が低下。組織へ水が移動。→ むくみ(浮腫) として表れる。 という流れでおきます。利尿剤で水分の排出を促進させることで解消させようという意図です。脱水や低血圧に伴う、立ちくらみやめまいに注意が必要です。

以上より、正解は 1 です。

ちなみに、選択肢 2 ですが
薬剤性膵炎の初期症状です。アザチオプリンや、L-アスパラギナーゼなどの投与において注意が必要です。

選択肢 3 ですが
血栓の初期症状です。トラネキサム酸などが原因薬として知られており注意が必要です。

選択肢 4 ですが
間質性肺炎の初期症状です。インターフェロン製剤や、小柴胡湯などの使用において注意が必要です。

選択肢 5 ですが
偽アルドステロン症(低 K 血症+高血圧、高 Na 血症)の初期症状です。カンゾウを含む薬の使用時などにおいて注意が必要です。

問219

選択肢 1 ですが
分岐鎖アミノ酸は、主に筋肉で代謝されます。主に肝臓で代謝されるのは分岐鎖アミノ酸以外のアミノ酸です。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2,3 は、その通りの記述です。

選択肢 4 ですが
ヘモグロビンの代謝により生じるのがビリルビン(黄色)です。ビリルビン → ヘモグロビンへと変換されるわけではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

ちなみにビリルビンは、肝臓で代謝されます。具体的には、ビリルビンとグルクロン酸が結合して胆汁として分泌され、その後様々な代謝を受けて尿や便とともに排出されます。肝機能の低下に伴い、血中のビリルビン濃度が高くなり黄疸症状として表れます。

選択肢 5 ですが
ヘパリンは、血をサラサラにする成分です。合成が低下すれば、凝固傾向が促進します。出血傾向となるわけでは、ありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2,3 です。

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