99回薬剤師国家試験 問110解説

 問 題     

日本薬局方エテンザミドは、化合物Aを経て合成される。図はAの1H-NMRスペクトル(400MHz、CDCl3、基準物質はテトラメチルシラン)である。Aの構造は1~5のうちどれか。1つ選べ。なお、アとカのシグナルは重水(D2O)を添加するとほぼ消失した。

 

 

 

 

 

正解.1

 解 説     

芳香環に直接結合している水素は大体 7~8 ppm くらいのところにピークが出てくるので、イ、ウ、エ、オがそれに当たります。

イ~オ の 4 つはそれぞれ違ったピークなので、等価な水素ではないはずです。よって、この時点で選択肢 2 と 3 は不適切だとわかります(1,4-置換体だと 2 位と 6 位、3 位と 5 位の水素がそれぞれ等価なので)。

また、イ~オのピークは、ダブレット(二重線)が 2 つと、トリプレット(三重線)が 2 つですので、選択肢 5 も外れます。もし選択肢 5 が正解なら、シングレットが 1 つと、ダブレットが 2 つ、トリプレットが 1 つという構成のはずです。

残るは選択肢 1 か 4 かですが、 4 のほうだと芳香環以外の水素が5つあります(-OCH3 と-NH2)。しかし、NMR チャートには残りが ア の 2H と カ の 1H しかないので、水素の数が合いません。よって、選択肢 1 が正解となります(アが-NH2 に該当し、カが-OHに該当します)。

また、問題文中に「アと力のシグナルは重水(D2O)を添加するとほぼ消失した」とありますが、これは溶液中ではイオン化しやすい-OHや-NH2 が存在するというヒントですので、ぜひ覚えておいてください。(-OHや-NH2 がそれぞれ-ODや-ND2 に置換されるため、1H-NMRチャートには現れなくなります。)

以上より、正解は 1 です。

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