薬剤師国家試験 第99回 問103 過去問解説

 問 題     

メトキシベンゼン(アニソール)Aの一般的な合成法を以下に示した。これに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. SN2機構で進行する。
  2. カルボカチオン中間体を経由して進行する。
  3. ヨードメタン(C)の代わりにCH3SO3CH3を利用することができる。
  4. プロトン性極性溶媒を使用すると反応が速く進行する。
  5. Aは、DとEから合成することも可能である。

 

 

 

 

 

正解.1, 3

 解 説     

1について、基質となる CH3I は立体的に小さく求核剤が近づきやすいので、SN2 反応が起きる条件が揃っています。よって、これは正しいです。

2で、SN2 反応は脱離と求核攻撃が同時に起こる協奏反応です。よって、カルボカチオン中間体を経ることはありません。SN2 反応については、有機化学 求核置換反応(SN2反応)の項目を参照してください。

3は、 CH3SO3CH3 を使った場合は脱離基がCH3SO3になるので、これもヨードメタン同様に使えます。

4で、プロトン性極性溶媒を使用すると求核剤であるナトリウムフェノキシドのイオン化(アニオン化)が阻害されますので、このような溶媒を使うと反応が早くなるどころか、むしろ妨げとなります。

5は、基質と求核剤が反対になっていますが、ブロモベンゼンは SN1 反応や SN2 反応といった置換反応を起こさない(起こしにくい)ので、これでは同様の反応で A が生成することはありません。SN1 反応が起こらない理由は、ベンゼン環はすでに安定なため、カチオン化(陽イオン化)が難しいからです。SN2 反応が起こらない理由は、ブロモベンゼンが立体的に大きいので、求核剤が近づきにくいためです。

以上より、正解は 1 と 3 になります。

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