薬剤師国家試験 第99回 問101 過去問解説

 問 題     

次の構造式で示される日本薬局方収載医薬品クロラムフェニコールの正しい化学名はどれか。1つ選べ。

  1. 2,2-Dichloro-N-[(1S,2S)-1,3-dihydroxy-3-(4-nitrophenyl)propan-1-yl]acetamide
  2. 2,2-Dichloro-N-[(1S,2S)-1,3-dihydroxy-1-(4-nitrophenyl)propan-2-yl]acetamide
  3. 2,2-Dichloro-N-[(1S,2S)-1,3-dihydroxy-3-(4-nitrophenyl)propan-2-yl]acetamide
  4. 2,2-Dichloro-N-[(1R,2R)-1,3-dihydroxy-3-(4-nitrophenyl)propan-1-yl]acetamide
  5. 2,2-Dichloro-N-[(1R,2R)-1,3-dihydroxy-1-(4-nitrophenyl)propan-2-yl]acetamide

 

 

 

 

 

正解.5

 解 説     

まず、どの選択肢でも最後が acetamide(アセトアミド)になっているので、これは「アミド」の一種であることがわかります。(つまり、ベンゼンの一部にアミドがくっついているのではなく、アミドに芳香族の置換基がついていることになります。)となると、アミドの C(炭素)が1 位ということになるので、アミドの C の右にある C が2位で、そこに Cl が2つ付いているので、2,2 – Dichloro ~ のようになります(この時点では選択肢はひとつも消せません)。

続いてアミドの N のほうを見ると、N についている大きな置換基が、選択肢中のN-[~]で表される、[~]内の部分になります。この大きな置換基自体の主鎖は炭素数が3つなのでプロパン(プロパニル)となり、主鎖の真ん中のCがNと結合しているため、N-[~propane-2-yl] となることがわかります。この時点で、選択肢では 1 と 4 が外れます。

また、プロパン(プロパニル)のうち、紙面左側のCが1位で、ここの絶対配置は R です。R である理由は、H が奥に出ていて、残る置換基の優先順位が
① 上側の置換基、O
② 右下の置換基、C(NCH) (  )内の原子は、さらに隣の原子を示しています。
③ 左下の置換基、C(CCC)なので、右回りでRとなります。このあたりのことを詳しく知りたい場合は、有機化学まとめました 1-2 5) 絶対配置の表示法 の RS 表示の項目を参照してください。

1 位の C の右隣(つまり N に結合している C)は 2 位の C です。ここも同様に考えると、絶対配置が R となります。考え方は上記と一緒ですが、H が手前に出ていて、残る置換基の優先順位が
① 右上の置換基、N
② 左上の置換基、C(OCH)  (  )内の原子は、さらに隣の原子を示しています。
③ 下側の置換基、C(OHH)なので、左回りで S、ただし「Hが手前」になっているため反転して、正しい絶対配置は R となります。

この時点で (1R , 2R) が決まったので、正解は 4 か 5 ですが、上記の通りすでに 1 と 4 は不適とわかっているので、答えは 5 になります。

以上より、正解は 5 です。

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