薬剤師国家試験 第98回 問262-263 過去問解説

 問 題     

80歳男性。喀痰よりMRSAが検出され、以下の薬剤が処方された。

問262

この患者の薬物療法において、薬剤師が考慮すべき検査項目はどれか。2つ選べ。

  1. 最小発育阻止濃度(MIC)
  2. QT間隔
  3. フィブリノーゲン
  4. 尿中ミクログロブリン
  5. 血中テストステロン

問263

MRSAに対するアルベカシンの抗菌作用機序として、正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. 細菌のDNA依存性RNAポリメラーゼを阻害し、転写を抑制する。
  2. 細菌のエルゴステロール生合成を阻害し、細胞膜の透過性を高める。
  3. 細胞壁前駆体である直鎖状ペプチドグリカン末端のD-アラニル-D-アラニンと結合し、細胞壁の合成を阻害する。
  4. 細菌のリボソーム30Sサブユニットに結合し、タンパク質の合成を阻害する。
  5. 細菌の微小管に結合し、有糸分裂を阻害する。

 

 

 

 

 

正解.
問262:1, 4
問263:4

 解 説     

問262

MIC(minimum inhibitory concentration)とは、最小発育阻止濃度のことです。MRSA に対する抗菌薬による治療であるため、MIC は、考慮すべき検査項目であると考えられます。

QT 間隔とは、心電図における Q 波と T 波の間隔のことです。特に不整脈などは関係ないので、この患者の薬物療法において、考慮すべき検査項目であるとはいえないと考えられます。

フィブリノーゲンは、血液凝固因子の一つです。特に血液系は関係がないので、この患者の薬物療法において、考慮すべき検査項目であるとはいえないと考えられます。

アルベカシンは、使用にあたり、腎機能異常及び、聴力障害等の副作用に留意する必要があります。主に腎排泄型の薬剤です。又、尿中ミクログロブリンは、血症タンパクの一種です。腎機能に関する指標の一つです。よって、アルベカシン使用時は、尿中ミクログロブリン値は、考慮すべき検査項目であると考えられます。

血中テストステロンは、血中のテストステロンというホルモンの濃度のことです。特にホルモンは関係がないので、この患者の薬物療法において、考慮すべき検査項目であるとはいえないと考えられます。

以上より、正解は 1,4 です。

問263

アルベカシンは、アミノグリコシド系抗生物質の一つです。細菌のタンパク合成を阻害することにより、殺菌的に作用します。タンパク合成であることから、正解は 4 です。

ちなみに、DNA 依存性 RNA ポリメラーゼを阻害する抗菌薬は、リファンピシンです。抗結核薬です。

エルゴステロール生合成を阻害するのは、ポリエン系などの抗真菌薬です。

D-アラニン-D-アラニンと結合し、細胞壁合成を阻害するのは、グリコペプチド系抗菌薬などです。

微小管に結合して細胞分裂を阻害するのは、パクリタキセルなどの抗がん剤です。

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