薬剤師国家試験 第97回 問290-291 過去問解説

 問 題     

70歳男性。数日前から続く腹痛を伴う下痢を訴えて受診した。

問290

この患者に対する治療薬として、最も不適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. ロペラミド塩酸塩
  2. ブチルスコポラミン臭化物
  3. ピコスルファートナトリウム水和物
  4. ビフィズス菌製剤
  5. タンニン酸アルブミン

問291

この患者は、翌日から水様便となり、下痢が止まらず再度受診した。このとき初めて「下痢症状を発現する前に生の牛肉を摂っていた」ことを告げた。以下の記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

  1. 細菌性食中毒では、急性胃腸炎の症状を示す。
  2. 血液から分離した菌のベロ毒素の産生について検査し診断する。
  3. 溶血性尿毒症症候群や脳症を併発することがある。
  4. 水分及び電解質の補給には、市販の「スポーツ飲料水」も用いられる。
  5. 消化管運動を抑制する薬剤は用いない。

 

 

 

 

 

正解.
問290:3
問291:2

 解 説     

問290

ロペラミドは、下痢を止める薬です。オピオイド受容体に作用して、消化管運動の抑制により下痢を止めます。

ブチルスコポラミン(ブスコパン)は、抗コリン薬です。消化管の運動をおさえ、腹痛を抑える働きがあります。

ピコスルファートナトリウムは、便秘薬です。よって、本問の患者に対する治療薬としては、不適切です。

ビフィズス菌は、整腸剤です。

タンニン酸アルブミンは、おだやかな収れん作用があります。腸の粘膜のタンパク質と結合して、保護膜を作ります。下痢止め薬として用いられます。牛乳アレルギーの人には使用できません。

以上より、正解は 3 です。

問291

生の牛肉を摂っていたこと、水様便といった情報から、腸管出血性大腸菌(O157等)による細菌性食中毒が疑われます。

細菌性食中毒では、急性胃腸炎の症状を示します。菌の検査は、便を培養して調べます。又、ベロ毒素は、免疫学的に血液から検査します。よって、選択肢 2 は誤りです。

溶血性尿毒症症候群や、脳症を併発することがあります。

選択肢 4,5 はその通りの記述です。

以上より、正解は 2 です。

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