薬剤師国家試験 第97回 問266-267 過去問解説

 問 題     

29歳女性。以下の処方せんを保険薬局に提出し、調剤を依頼した。

問266

調剤前に患者から情報収集したところ、妊娠の可能性があるが、医師には伝えていないとのことであった。添付文書には「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい」との記載がある。薬剤師の対応として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. 処方せん通り調剤し、妊娠が確定したら相談するよう伝える。
  2. 「投与しないことが望ましい」との記載であり、禁忌ではないのでそのまま調剤する。
  3. 医師に妊娠の可能性があることを伝え、処方変更の有無と今後の対応を確認する。
  4. 薬剤師として投与すべきではないと判断し、患者に説明した上で、調剤を行わない。
  5. 調剤を保留し、産婦人科の受診を勧める。

問267

妊娠時の薬物動態に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 薬物のタンパク結合に関与する血清中アルブミン濃度は、非妊娠時に比べて上昇する。
  2. 大部分の薬物は、能動輸送により血液胎盤関門を透過する。
  3. 胎盤にはシトクロムP450等の薬物代謝酵素が発現し、胎児の未発達な代謝能力を補っている。
  4. 胎児のエネルギー源であるグルコースは、胎盤に発現しているグルコーストランスポーターによって母体から供給される。

 

 

 

 

 

正解.
問266:3
問267:3, 4

 解 説     

問266

クロルプロマジンは、フェノチアジン系の抗精神病薬です。D2 受容体遮断薬です。妊婦に対する使用についての安全性は、2012年時点で確立していない薬です。(ほとんどの研究は、低用量、ときどきの使用なら、母子ともに安全という判断)

本問症例において、薬剤師は調剤前の情報収集により「妊娠可能性があるが、医師に伝えていない」こと、及び「添付文書によれば、妊娠可能性のある婦人に投与しないのが望ましい」ことがわかっています。よって、この処方をそのまま調剤してよいか、疑義が生じていると考えられます。

対応としては、疑義照会の対象ですので、医師に妊娠の可能性を伝え、今後の対応、処方変更の有無を確認するのが妥当であると考えられます。

以上より、正解は 3 です。

問267

妊娠中は、循環血液総量が増加します。血液成分の増加よりも、血しょう成分が増加します。つまり、血液中の水分が増加しています。逆にいえば、タンパク質濃度は、減少しています。よって、血清中アルブミン濃度は、非妊娠時に比べ、一般的に減少します。選択肢 1 は誤りです。

血液胎盤関門とは、母体から胎児への様々な物質の移行を抑止する関門です。実体としては、胎盤膜を構成する、細胞の層状構造です。血液胎盤関門には、様々なトランスポータが発現しており、薬物の胎盤への移行を制御しています。よって、大部分の薬物は、能動輸送により血液胎盤関門を透過するわけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3, 4 はその通りの記述です。

以上より、正解は 3,4 です。

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