薬剤師国家試験 第97回 問264-265 過去問解説

 問 題     

36歳女性。術後の病理検査により卵巣癌Ic期と診断され、パクリタキセルとカルボプラチンの併用療法が予定されている。処方1及び2は、この化学療法に対する支持療法である。

問264

処方2のデキサメタゾン錠の投与目的として、正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. 化学療法に伴う骨髄抑制の軽減
  2. 化学療法に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)の軽減
  3. 化学療法に伴う感染症の予防
  4. 抗炎症作用による化学療法の効果の増強
  5. 化学療法に伴う血栓形成の予防

問265

この患者に使用が予定されている薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. パクリタキセルは、微小管の安定化を引き起こし、有糸分裂を阻害する。
  2. カルボプラチンは、癌細胞のDNAを架橋し、増殖を抑制する。
  3. グラニセトロンは、ドパミンD2受容体を遮断し、消化管運動を調整する。
  4. デキサメタゾンは、タンパク同化作用と鉱質コルチコイド作用が共に強力である。

 

 

 

 

 

正解.
問264:2
問265:1, 2

 解 説     

問264

抗がん剤による治療に伴う副作用を軽減する目的で行われるのが、支持療法です。

オンダンセトロンは、5 – HT3 受容体拮抗薬です。又、デキサメタゾンはステロイドです。

支持療法として、特に消化器症状(悪心・嘔吐)の軽減を目的として 5 – HT3 受容体拮抗薬や、ステロイドが使用されます。よって、本処方は、化学療法に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)の軽減を目的としていると考えられます。

以上より、正解は 2 です。

問265

パクリタキセル(タキソール)は、タキサン系抗がん剤です。微小管に結合して安定化させ、脱重合を阻害することにより、腫瘍細胞の分裂を阻害します。

カルボプラチンは、プラチナ製剤です。アルキル化剤と類似した作用機序を示します。すなわち、DNAと結合して架橋を生成することにより、がん細胞の増殖を抑制します。シスプラチンの抗がん活性を弱めることなく、腎毒性などの副作用を回避することを目的として開発された抗がん剤です。

グラニセトロンは、5 – HT3 受容体拮抗薬です。化学療法の支持療法に、制吐目的で用いられます。ドパミン D2 受容体を遮断するわけではないので、選択肢 3 は誤りです。

デキサメタゾンは、鉱質コルチコイド作用が極めて少ないことが特徴です。よって、選択肢 4 は誤りです。

以上より、正解は 1,2 です。

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