問 題
72歳女性。肺癌に合併した閉塞性肺炎のため、入院中に抗菌化学療法を受けていた。高熱と腹痛、頻回の水様下痢などの消化器症状を呈し粘血便が見られたため糞便培養検査を行ったところ、ディフィシル菌(Clostridium difficile)及びその毒素が検出された。
問224
上記の症状を起こしやすい化学療法薬はどれか。2つ選べ。
- クリンダマイシンリン酸エステル
- アンピシリンナトリウム
- ゲンタマイシン硫酸塩
- メトロニダゾール
問225
上記の症状が誘起された原因として、正しいのはどれか。1つ選べ。
- 菌のゲノムDNAに変異が起こった。
- 腸内の細菌叢が変化した。
- 菌が芽胞を形成した。
- 毒素タンパク質の高次構造が変化した。
- 菌の薬物代謝酵素の発現が誘導された。
正解.
問224:1, 2
問225:2
解 説
問224
ディフィシル菌はグラム陽性桿菌です。抗生物質を用いることによる、腸内細菌叢を構成する細菌の構成変化をきっかけにディフィシル菌が増殖することにより発症する症状を偽膜性大腸炎と呼びます。
代表的な偽膜性大腸炎の原因としては、アンピシリン、セフェム系抗生物質、クリンダマイシンです。最近は、他のいくつかの抗生物質でも、同様に偽膜性大腸炎の原因となることがわかってきています。
クリンダマイシンは、リンコマイシン系の抗生物質です。誤嚥性肺炎などに用いられ、偽膜性腸炎の原因となることが知られています。
アンピシリンナトリウムは、ペニシリン系の抗生物質です。肺炎などに用いられ、偽膜性大腸炎の原因となることが知られています。
ゲンタマイシンは、アミノグリコシド系抗生物質です。組織移行性が低く、肺炎にはあまり用いられません。
メトロニダゾールは、ディフィシル菌に対する抗菌薬として用いられる薬です。
以上より、正解は 1,2 です。
問225
本問における症状は、いわゆる抗菌薬関連下痢症/腸炎です。これは、健全な腸内細菌叢が、抗菌薬投与による環境の変化によって、毒素を出すクロストリジウム・ディフィシルが増えることで、下痢や腸炎がおきる感染症です。よって、腸内の細菌叢の変化が、症状の原因であるといえます。
以上より、正解は 2 です。
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