97回薬剤師国家試験 問222-223解説

 問 題     

48歳男性。白血病に対する化学療法として、イマチニブメシル酸塩錠の投与が開始された。

問222

イマチニブメシル酸塩錠に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

  1. 染色体検査又は遺伝子検査により、慢性骨髄性白血病と診断された患者に使用する。
  2. 嘔吐のリスクを軽減するため、セロトニン受容体遮断薬を用いる。
  3. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人への投与は禁忌である。
  4. 消化管吸収が悪いため、空腹時にコップ一杯の水とともに服用する。
  5. CYP3A4による代謝を受けるため、CYP3A4活性を阻害する薬剤と併用する場合、血中濃度が上昇する可能性がある。

問223

イマチニブが作用する標的タンパク質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 染色体転座により生成するキメラタンパク質である。
  2. セリン又はトレオニンをリン酸化する活性を有する。
  3. 持続的なキナーゼ活性を有する。
  4. Gタンパク質の一種で、細胞増殖を制御する。

 

 

 

 

 

正解.
問222:4
問223:1, 3

 解 説     

問222

イマチニブ(グリベック)は、Bcr-Abl チロシンキナーゼを選択的に阻害する疾患特異的な分子標的治療薬です。適応は、染色体検査又は遺伝子検査により診断された慢性骨髄性白血病です。他にも適応があり、それぞれに応じた検査が必要となります。

イマチニブを服用すると、吐き気が半数以上に副作用として現れます。がん治療における、制吐療法に関しては、ガイドラインに詳しくまとまっています。ステロイド、5-HT3(セロトニン)受容体拮抗薬、NK1 受容体遮断薬が主に用いられます。

イマチニブは、妊婦への投与が禁忌です。外国において流産、及び動物実験において催奇形性や着床後死亡率の増加が報告されています。

イマチニブは、消化管刺激作用を最低限に抑えるため、食後に、多めの水で服用します。よって、空腹時服用ではないので、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 はその通りの記述です。
アゾール系抗真菌剤、エリスロマイシン、クラリスロマイシンなどとの併用に注意する必要があります。

以上より、正解は 4 です。

問223

イマチニブが作用する標的タンパク質は、bcr – abl チロシンキナーゼです。このタンパク質は、第 9 番染色体と第 22 番染色体が相互転座し、 abl 遺伝子と bcr 遺伝子が融合した、abc – bcr 遺伝子から翻訳されます。そのため、キメラタンパク質と呼ばれます。

abc – bcr 遺伝子を持つ異常染色体は、フィラデルフィア染色体と呼ばれます。abc – bcr 遺伝子から翻訳されるタンパク質は、恒常的に活性化されたチロシンキナーゼです。白血病、すなわち血液のガンと呼ばれる疾病を引き起こすことから類推できるように、細胞増殖を促進させます。

以上より、正解は 1,3 です。

コメント