薬剤師国家試験 第97回 問161 過去問解説

 問 題     

脂質異常症治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. コレスチラミンは、末梢脂肪組織からの遊離脂肪酸の動員を抑制し、トリグリセリド合成を低下させる。
  2. エゼチミブは、小腸からのコレステロールの吸収を選択的に阻害する。
  3. プロブコールは、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールに対する抗酸化作用により抗動脈硬化作用を示す。
  4. クロフィブラートは、脂肪酸のβ酸化を抑制し、トリグリセリド合成を低下させる。
  5. イコサペント酸エチルは、肝臓でのコレステロールから胆汁酸への異化を促進し、LDL受容体を増加させる。

 

 

 

 

 

正解.2, 3

 解 説     

コレスチラミンは、陰イオン交換樹脂です。腸内で胆汁酸と結合し、大便と共に排泄されることにより、胆汁酸の腸肝循環を妨げます。胆汁酸の排出により、不足した胆汁酸を合成しようと、コレステロールの使用が促進されます。そのため、血中からコレステロールを取り込もうと、肝細胞において LDL 受容体発現が促進されます。その結果、血中コレステロールが減少します。よって、抹消脂肪組織からの遊離脂肪酸の動員を抑制するわけではないので選択肢 1 は誤りです。ニコモールや、ニセリトロールについての記述と考えられます。

エゼチミブは、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬です。小腸壁細胞に存在するタンパク質(NPC1L1=Niemann-Pick C1 like 1)を阻害することでコレステロールの吸収を選択的に阻害します。

プロブコールは、異化促進薬です。肝臓におけるコレステロールから胆汁酸への異化排泄を促進することで血中コレステロールを低下させます。又、LDL の酸化変性を抑制することによる、抗動脈硬化作用も有します。

クロフィブラートは、フィブラート系薬です。核内受容体である PPARα に結合することにより、肝臓での中性脂肪合成を抑制すると共にリポタンパク質リパーゼを活性化させることで、血中の中性脂肪値を低下させます。よって、脂肪酸のβ酸化を抑制するわけではないので、選択肢 4 は誤りです。

イコサペンタエン酸エチルは、イコサペンタエン酸(EPA)製剤です。様々な作用機序を通じて、脂質異常症を改善させます。記述は、異化促進の部分はプロブコールについてであり、LDL受容体の増加は HMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタチン)や、陰イオン交換樹脂についてと考えられます。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2,3 です。

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