問 題
75 歳男性。糖尿病及び糖尿病性腎症で在宅療養にて腹膜透析を行い、薬物治療中である。今回、処方 1 及び処方 2 が追加された処方箋が発行された。過去の薬歴から処方 1 及び処方 2 は初めて処方されたことがわかった。薬剤師が、調剤した薬剤を持って患者宅を訪問した。
(直近の検査値)
白血球 6,500/μL、赤血球 284×104/μL、Hb 8.6 g/dL、Ht 26 %、MCV 91.5 fL、MCH 30.3 pg、MCHC 33.1 %、血小板 22.3×104/μL、eGFR 8.9 mL/min/1.73 m2、血清鉄 45 μg/dL (基準値 54 ~ 200 μg/dL (男性))、血清ビタミン B12 値と血清葉酸値は基準値内
問310
処方 1、処方 2 の説明として、適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 処方 1 の薬は常温で保存してください。
- 処方 1 の薬の副作用として血圧が上昇する場合があります。
- 処方 2 の薬は腎機能の悪化を予防するお薬です。
- 処方 2 の薬の使用中は、定期的に Hb 値を測定する必要があります。
- Hb 値にかかわらず、血清鉄値が基準値内に回復すれば、処方 1 の薬が中止になります。
問311
患者より、処方 1 の薬のラベルに記載されている「生物」について質問があった。薬剤師の説明の内容として、正しいのはどれか。1 つ選べ。
- 感染症のリスクがあるため、処方 1 の薬の使用に際し、患者からの文書による同意が必要となる。
- 処方 1 の薬は、植物由来である。
- 処方 1 の薬は、疾病の治療を目的として、人の細胞に導入され、体内で発現する遺伝子を含有するものである。
- 処方 1 の薬は、製薬企業に感染症定期報告を義務付けるなど感染症に関する対策が強化されている。
- 処方 1 の薬を使用した患者の氏名、住所を記録したものを 10 年間薬局で保存する必要がある。
正解.
問310:2, 4
問311:4
解 説
問310
ダルベポエチンアルファは、エリスロポエチン受容体を刺激し、赤芽球前駆細胞から赤血球への分化を促進することで、腎性貧血を改善する貧血治療薬です。(105-156 貧血治療薬)。
造血作用を示す薬であるため、副作用としては高血圧がおこります。(100-264265 65歳男性。糖尿病性腎症)。
選択肢 1 ですが
ダルベポエチンアルファは、2 ~ 8 ℃ で保存なので、常温保存は不適切です。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
選択肢 3 ですが
鉄剤は、貧血改善を目的とした鉄分補充用です。腎機能の悪化予防ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
選択肢 5 ですが
Hb 値が正常値になった上で、更に他の要素もふまえて処方中止の判断となります。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 310 の正解は 2,4 です。
問311
生物由来製品なので「生物」と記載されています。生物由来製品とは、ヒトその他の生物(植物は除く)に由来するものを原材料として製造される医薬品などのうち、特別の注意を要するものです。具体的には、ワクチンなどです。(参考 法規・制度・倫理まとめ 旧薬事法の重要な項目)。
選択肢 1 ですが
特に文書による同意は必要ありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
植物は除くので、ありえません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
細胞に導入され、体内で発現する遺伝子を含有するものとは、「再生医療等製品」のことです。(参考 107-145 コンタクトレンズの医療機器としての分類)。生物由来製品ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
再生医療等製品 及び 生物由来製品の感染症対策について、それぞれ 薬機法第68条の14及び同第68条の24 に基づき、最新の論文等から得られた知見に基づき評価し、成果を厚生労働大臣に定期的に報告しないといけません。
選択肢 5 ですが
生物由来製品の具体例としてワクチンをイメージすれば、別に保存しなくてよいと判断できるのではないでしょうか。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 311 の正解は 4 です。
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