問 題
60 歳女性。市町村が実施する検診で骨密度の低下が指摘され、近隣の整形外科を受診した。脆弱性骨折は見られなかったが、骨密度低下 (腰椎骨密度測定値：若年成人平均値 (YAM) の 65 %) のため骨粗しょう症と診断された。
本日、以下の処方箋を持って初めて薬局を訪れた。
問250
処方されたいずれかの薬物の作用機序として、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- カルシトニン受容体を遮断することで、骨形成を促進する。
- RANKL (NF-κB 活性化受容体リガンド) に結合することで、骨形成を促進する。
- ビタミン D 受容体を刺激することで、腸管からのカルシウム吸収を促進する。
- ファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害することで、骨吸収を抑制する。
- エストロゲン受容体に結合してエストロゲン様作用を示すことで、骨吸収を抑制する。
問251
薬剤師が他の医療機関の受診の有無を確認したところ、今回の整形外科以外に内科に通院していることがわかった。お薬手帳を確認したところ、以下の薬剤が処方されていることが確認できた。なお、整形外科ではお薬手帳を提示していなかった。
この患者のお薬手帳の内容から、今回整形外科で処方された薬剤が禁忌となる疾患を内科で治療中である可能性が考えられた。その疾患はどれか。1 つ選べ。
- 高カルシウム血症
- 深部静脈血栓症
- パニック障害
- 胃食道逆流症
- ナルコレプシー
正解．
問250：3, 5
問251：2
解 説
問250
バゼドキシフェンは、語尾がキシフェンなので、ラロキシフェンと同じく SERM です。エストロゲン受容体に結合し、エストロゲン様作用を示し、骨吸収を抑制します。
エルデカルシトールは、活性型ビタミン D3 製剤です。ビタミン D 受容体を刺激することで、腸管からの Ca 吸収を促進します。
以上より、問 250 の正解は 3,5 です。
問251
リバーロキサバン（イグザレルト）があるので、血栓症治療中です。骨粗しょう症治療薬との組み合わせで注意するとくれば、深部静脈血栓症があります。SERM が女性ホルモン様作用を示すのですが、肝臓において血液凝固促進方向に働くため、血栓生成を促します。そのため禁忌です。
問 251 の正解は 2 です。
ーーー以下、国試対策として、不要ーーーー
ちなみにですが
女性ホルモン様の作用 というのは、血管内皮には弾力性促進、動脈硬化抑制方向に働きます。そのため、冠動脈イベントについて、悪くないんですよね。
とはいえこれが、イベント抑制には働かない という 臨床試験結果が出てます。トータルで見ると、冠動脈イベントにも、凝固のほうが より大きく寄与なんでしょうか。バランスが本当に大切なんだな、と実感します。「◯◯に良い」みたいな表現に対して、疑問や批判的視点が本当の意味での健康向上には不可欠なんだなぁ。。
同じ薬であっても作用する場所によって、もたらす影響が異なり、個別の状況を考慮しないと、治療のつもりでむしろ悪影響になってしまうのが薬だな、と感じるポイントと思います。
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