問 題
糖化反応は生体内や食品中で起こる普遍的な反応である。糖尿病の診断に用いられ、血糖コントロールの状態を把握するマーカーである糖化ヘモグロビン (HbA1c) の生成にも、この反応が関わっている。
問119
グルコースはヘモグロビン A の β 鎖 N 末端のアミノ基と反応し、化合物 ア を与えたのち、HbA1c となる。化合物 ア の構造として最も適切なのはどれか。1 つ選べ。
問120
HbA1c に関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- HbA1c の生成には酵素が必要である。
- HbA1c の生成はグルコース濃度に依存する。
- HbA1c は、非酵素的にグルコースとヘモグロビン A に解離する。
- グルコースは、赤血球内に移行しにくいので、HbA1c の生成には 2 ~ 3 ヶ月を要する。
- HbA1c 値は、赤血球寿命の影響を受ける。
問121
食品の変質のうち、HbA1c の生成と同様に、糖化反応により起こるのはどれか。2 つ選べ。
- 食品が腐敗するとヒスタミンが生成する。
- ポテトチップスを製造するとアクリルアミドが生成する。
- 砂糖水を 150 ~ 200 ℃ で加熱すると茶色く変色する。
- パンを焼くと茶色く変色する。
- リンゴの切り口が茶色く変色する。
正解.
問119:4
問120:2, 5
問121:2, 4
解 説
問119
アルデヒドやケトンに第一級アミンを反応させると、アミンの付加反応に続く脱水反応が起こり、結果、イミンが生成します。C=N という部分に注目すれば、正解は 4 or 5 です。そして、官能基部分以外は変わらないと考えられるので、正解は 4 です。
以上より、問 119 の正解は 4 です。
参考 有機化学まとめ アミンの付加反応・Grinard試薬の反応
問120
HbA1c は、過去1~2ヶ月の推定平均血糖値を反映した値です。「HbA1c の生成はグルコース濃度に依存する」という記述は妥当です。
また、赤血球の平均寿命は約 4 ヶ月ですが、例えば貧血などで赤血球寿命が短くなると、血中グルコースとヘモグロビンが結合するための時間が短くなります。この結果、HbA1c 値は小さくなると考えられます。従って、「HbA1c 値は、赤血球寿命の影響を受ける」という記述も妥当です。
以上より、問 120 の正解は 2,5 です。
問121
選択肢 1 ですが
腐敗によるヒスタミン生成は、食品に含まれるアミノ酸の一種であるヒスチジンが代謝されて生じる反応です。糖化反応ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
アスパラギン+糖 などを介してアクリルアミドが生成します。(参考 106-129 食品中の有害物質)
選択肢 3 ですが
糖のみの加熱はカラメル化です。糖化反応ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
アミノ酸+糖 によるメイラード反応の代表例です。
選択肢 5 ですが
リンゴの褐変は、酵素的褐変の代表例です。リンゴ中のポリフェノールが酸化することによる変化なので、糖化反応ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問121 の正解は 2,4 です。
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