薬剤師国家試験 第107回 問262-263 過去問解説

 問 題     

48歳女性。月経あり。乳がん(ER及びPgR陽性、HER2陰性)と診断され左乳房部分切除及び腋窩リンパ節郭清術を受けた。

術後化学療法として、シクロホスファミド600mg/m2、エピルビシン100mg/m2を3週毎に4サイクルを終了し、パクリタキセル80mg/m2を3週投与、1週休薬の4サイクルを開始している。

卵巣機能は回復しており、術後化学療法終了後にタモキシフェンによる治療を検討中であるが、本患者においてはタモキシフェンと他剤との併用療法も選択可能である。

担当薬剤師は3次資料を用いて、タモキシフェン単独療法と他剤との併用療法の有用性を調査することにした。

問262

この場合用いる資料として優先順位が高いのはどれか。2つ選べ。ただし、これらの資料は調査時の最新版を用いることとする。

  1. Drug Interaction: Analysis and Management
  2. 診療ガイドライン
  3. UpToDate
  4. Drugs in Pregnancy and Lactation: A Reference Guide to Fetal and Neonatal Risk
  5. 重篤副作用疾患別対応マニュアル

問263

調べた結果、術後化学療法後に卵巣機能が回復している場合、タモキシフェンに薬物Aを併用することが推奨されていた。なお、薬物Aは、この患者で術後化学療法として用いられた薬物とは作用機序が異なるものであった。

薬物Aの作用機序として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. 微小管タンパク質の脱重合を阻害して、細胞分裂を抑制する。
  2. DNAの塩基対にインターカレーションして、DNA依存性RNAポリメラーゼを阻害する。
  3. エストロゲン受容体に結合して、内因性のエストロゲンと競合し抗腫瘍作用を発揮する。
  4. DNAをアルキル化して、DNA合成を阻害する。
  5. 持続的な性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)受容体の刺激により脱感作を引き起して、ゴナドトロピンの遊離を抑制する。

 

 

 

 

 

正解.
問262:2, 3
問263:5

 解 説     

問262

選択肢 1 ですが
Drug Interaction は、薬物相互作用についての資料です。優先順位が低くはないのですが、ガイドラインや UpToDate の方がより優先順位が高いと考えられます。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
最新のガイドラインを確認するのは、優先順位が高いと考えられます。

選択肢 3 は妥当です。
Up to Date は 臨床上のエビデンスが要約されている情報集です。(99-68)。

選択肢 4 ですが
Drugs in Pregnancy and Lactation は、妊娠中及び授乳期の薬物に関する文献を包括的に要約した資料です。本症例において用いる資料として優先順位が高いとは、考えられません。選択肢 4 は誤りです。(97-66)。

選択肢 5 ですが
重篤副作用疾患別対応マニュアルは、副作用の早期発見・早期対応に資するため、ポイントになる初期症状や好発時期、医療関係者の対応等について記載されているマニュアルです。タモキシフェン単独療法と他剤との併用療法の有用性を調査する、という目的において優先順位は高くありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、問 262 の正解は 2,3 です。

問263

卵巣機能が回復している場合、卵巣機能抑制のため、LH ― RH アゴニスト が、併用薬として推奨されます。LHーRH アゴニストの代表例は、ゴセレリン(ゾラデックス)です。ゴセレリンは、持続的投与によりゴナドトロピン放出ホルモン (GnRH) 受容体の脱感作を引き起こし、卵胞刺激ホルモン (FSH) や黄体形成ホルモン (LH) の分泌を抑制します。

以上より、問263 の正解は 5 です。

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