薬剤師国家試験 第107回 問165-166 過去問解説

 問 題     

60歳男性。仕事が忙しく睡眠不足が続いていた。ある日、右側胸部にかゆみを伴った皮疹が現れ、強い痛みも生じたため受診し、帯状疱疹と診断された。

問165

この患者に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 疲労やストレスが発症の要因となった可能性が高い。
  2. 皮疹は血管に沿って全身に拡がっていく。
  3. 病原体は麻しんと同じである。
  4. 皮疹出現の約2週間前に感染したと考えられる。
  5. 副腎皮質ステロイド薬を用いる場合、抗ウイルス薬を併用する。

問166

抗ウイルス薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. アメナメビルは、帯状疱疹ウイルスのヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の DNA 依存性 ATPase 活性を阻害して、mRNA の合成を阻害する。
  2. ガンシクロビルは、サイトメガロウイルスのチミジンキナーゼにより一リン酸化された後、宿主細胞キナーゼで三リン酸化体まで変換されて、ウイルスの RNA ポリメラーゼを阻害する。
  3. オセルタミビルは、インフルエンザウイルスが宿主細胞から遊離する際に働くノイラミニダーゼを阻害して、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する。
  4. ホスカルネットは、サイトメガロウイルスの RNA ポリメラーゼのピロリン酸結合部位に結合して、RNA の合成を阻害する。
  5. アシクロビルは、三リン酸化体に変換されて、帯状疱疹ウイルスに感染した宿主細胞内でデオキシグアノシン三リン酸 (dGTP) と競合して、ウイルスの DNA ポリメラーゼを阻害する。

 

 

 

 

 

正解.
問165:1, 5
問166:3, 5

 解 説     

問165

帯状疱疹は
水痘・帯状疱疹ウイルスが原因である、痛み痒みを伴う、帯状の発疹です。水痘・帯状疱疹ウイルスの、再活性化により起こります。免疫力低下や過労が危険因子です。(参考 98-296297)。

選択肢 1 は妥当です。
抗ウイルス剤による薬物治療と共に 安静にすることが推奨されます。

選択肢 2 ですが
冒頭リンク先の症例にもありましたが、帯状疱疹は、主に片側にのみ症状が現れます。また、名前にもあるように帯状に症状が現れることが多いです。「血管に沿って 全身に」ではないと考えられます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
麻しんの原因は麻しんウイルスです。帯状疱疹の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスです。病原体は同じではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
帯状疱疹は、ウイルスの再活性化により起こります。「症状が起こる2週間前に感染」ではないと考えられます。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。

以上より、問 165 の正解は 1,5 です。 

問166

選択肢 1 ですが
アメナメビルは、ヘリカーゼ・プライマーゼ活性を直接阻害することで、二本鎖 DNA の開裂及び RNA プライマーの合成を抑制し、ヘルペスウイルスの増殖を初期段階で阻害します。 (106-208209)。「DNA 依存性 ATPase 活性を阻害」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
ガンシクロビルは、DNA ポリメラーゼ阻害薬です。「RNA ポリメラーゼを阻害」ではありません。選択肢 2 は誤りです。(106-66)。

選択肢 3 は妥当です。
オセルタミビルについての記述です。(抗ウイルス薬の作用点であるタンパク質について 101-40)。

選択肢 4 ですが
ホスカルネットは、DNA ポリメラーゼのピロリン酸結合部位に直接作用し、DNA ポリメラーゼを阻害する 注射薬です。AIDS や 造血幹細胞移植患者における サイトメガロウイルス感染症に用いられます。「RNA ポリメラーゼのピロリン酸結合部位」ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
アシクロビルについての記述です。

以上より、問 166 の正解は 3,5 です。

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