薬剤師国家試験 第107回 問128 過去問解説

 問 題     

未使用のコーン油とオリーブ油について、油脂の変質に対する温度の影響を調べる実験を行った。実験では、60 ℃ の一定温度で 7 週間保存し、1 週間ごとに過酸化物価 (meq/kg) と酸価 (mg/g) の測定を行った。結果は以下のグラフに示すとおりである。

なお、実験に用いたコーン油とオリーブ油の実験開始前 (開封直後) におけるヨウ素価 (g/100g) は、コーン油が 124、オリーブ油が 75 であった。コーン油はリノール酸を、オリーブ油はオレイン酸を最も多く含む。

コーン油とオリーブ油の変質試験に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 測定値 A は過酸化物価、測定値 B は酸価である。
  2. コーン油は、オリーブ油よりも開封直後のヨウ素価が大きいことから、飽和脂肪酸を多く含むことがわかる。
  3. コーン油は、オリーブ油よりも早い時期に測定値Aの値が上昇していることから、オリーブ油よりも酸化しやすいことがわかる。
  4. コーン油とオリーブ油は、いずれも測定値Bが4週目から上昇していることから、酸化のされやすさは同じであることがわかる。
  5. 未使用のコーン油とオリーブ油を低温・暗所で保存した場合では、測定値Aと測定値Bの値の上昇の程度は、この実験結果よりも増加すると予想される。

 

 

 

 

 

正解.1, 3

 解 説     

選択肢 2,4,5 を誤りと判断したい問題です。

選択肢 1 は妥当です。

過酸化物価ですが、この値は過酸化物、すなわちヒドロペルオキシド(RCOOH)の量を示します。よって、変敗する過程においてまずは上昇するのですが、だんだんヒドロペルオキシドも分解されていくため時間がかなり経つと今度は下がってきます。油脂の変質試験において唯一、時間と共に上がって下がるという挙動を示します

酸価とは、油脂 1g の中和に必要な KOH (mg) です。遊離脂肪酸を検出する試験法です。油脂の変敗に伴い増加していきます。

選択肢 2 ですが
ヨウ素価は、油脂中の不飽和部分の量を示します。ヨウ素価が大きいということは「不飽和脂肪酸」を多く含む ということです。「飽和脂肪酸を多く含む」わけではありません。選択肢 2 は誤りです。

ちなみに
変敗していくと、どんどん酸化していくことから、不飽和な部分はどんどん飽和されていきます。よって、時間が経つとヨウ素価は下がります。

選択肢 3 は妥当です。

選択肢 4 ですが
このグラフでは、測定値 B は オリーブ油について「4週目から上昇している」といえなくもないが、はっきりとはわからないと思われます。また、測定値 A の挙動について、明らかに違いが見られます。これらから「酸化のされやすさが同じ」というのは、いいきれないと判断できるのではないでしょうか。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
低温・暗所であれば、化学反応の進行が一般的には遅くなると考えられます。そのため、油脂の変敗も遅くなり、結果として測定値 A,B の値の上昇の程度もゆっくりになるはずです。「上昇の程度が 増加する」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1,3 です。

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