薬剤師国家試験 第106回 問310-311 過去問解説

 問 題     

81歳男性。以前、ダラツムマブ(遺伝子組換え)の治験に参加していた。この医薬品の製造販売が承認され、薬価収載されるまでの期間に限り、無償提供プログラムがあることを知り、参加することになった。

なお、この医薬品の治験では症例数が限られていたことから、製造販売業者が作成した医薬品リスク管理計画(RMP)には、全例を対象にした特定使用成績調査の実施と安全性検討事項としてInfusion reaction、骨髄抑制、感染症が設定されていた。

問310

本剤投与によって起こりうる副作用を軽減するための処置として適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. Infusion reactionを軽減させるために、本剤投与前に副腎皮質ホルモンを投与する。
  2. 遅延性のInfusion reactionを軽減させるために、本剤投与後に抗ヒスタミン薬を投与する。
  3. 骨髄抑制のためにABO式血液型の検査を定期的に行う。
  4. 慢性閉塞性肺疾患もしくは気管支ぜん息のある患者には、投与後処置として気管支拡張薬及び吸入ステロイド薬の投与を検討する。
  5. A型肝炎ウイルスの再活性化を防ぐために肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行う。

問311

我が国の医療保険制度では、保険で認められている診療に加えて、薬価基準に収載されていない医薬品を使用すると、いわゆる混合診療となり、すべての医療が保険対象外となるのが原則である。

しかし、この無償提供プログラムに参加した患者の場合、ダラツムマブの薬剤料以外の医療費については保険外併用療養費制度によって保険給付の対象になる。

この無償提供プログラムは、次のどれに該当するか。1つ選べ。

  1. 評価療養
  2. 患者申出療養
  3. 選定療養
  4. 未承認薬療養
  5. 適応外療養

 

 

 

 

 

正解.
問310:1, 4
問311:1

 解 説     

問310

選択肢 1 は妥当です。
予防投与として、抗ヒスタミン薬や、ステロイド投与が行われます。

選択肢 2 ですが
予防投与としての抗ヒスタミン薬は、本剤投与「前」に使用すると考えられます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
骨髄抑制の確認のため検査するのは、白血球数などです。血液型の検査ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。

選択肢 5 ですが
再活性化に注意しなければいけないのは、B 型肝炎ウイルスです。A 型ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1,4 です。

問311

保険診療と、それ以外の診療である「混合診療」について、原則として、混合診療の場合、保険給付は認められません。例外は、保険外併用療養費制度です。「評価療養」、「選定療養」、「患者申出療養」の場合、保険給付が認められます。

評価療養の代表例が、治験の場合です。選定療養の代表例が、差額ベッド代を払う個室利用です。患者の希望でプラス α する療養と考えればよいです。患者申出療養の代表例は、治験対象外で、同治療の希望などです。(104-316317)。本問の事例は治験なので、評価療養に該当します。

以上より、正解は 1 です。

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