薬剤師国家試験 第106回 問300-301 過去問解説

 問 題     

51歳男性。2年前にStage Ⅳの直腸がんと診断され、抗がん剤による治療が開始された。現在、四次治療中で、医師からがん遺伝子パネル検査を提案された。

「がんの多い家系であり、がんが遺伝であることがはっきりするのは不安で、がん遺伝子パネル検査を受けることについて悩んでいる。」と、担当薬剤師に相談があった。そこで、薬剤師は、認定遺伝カウンセラーに相談することを勧めた。

※ ヒトの遺伝子のうち、がんの発生に関わる遺伝子セット(パネル)を一度に解析する検査。同定された遺伝子変異に効果のある抗がん剤が存在すれば、治療に用いることができる。

問300

この患者のがんが遺伝性である場合、原因となり得る遺伝子として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. APC
  2. BCR-ABL
  3. BRCA1
  4. EGFR
  5. PTEN

問301

認定遺伝カウンセラーが作成した以下の家系図から考えられることとして、正しいのはどれか。2つ選べ。なお、四角は男性、丸は女性を示す。

  1. 患者の母方の家系にがん患者が多い。
  2. アの重複がんは、遺伝性のがんを疑う根拠とならない。
  3. イは交通事故で死亡していなければ、がんに罹患していた可能性が高い。
  4. ウは今後がんを発症する可能性が高いので、がん検診を推奨する。
  5. エは未成年なので、カウンセリングの内容を伝えてはいけない。

 

 

 

 

 

正解.
問300:1
問301:3, 4

 解 説     

問300

認定遺伝カウンセラーは、本試験時点において 約 300 人ほどいる、養成大学院終了後認定試験に合格した専門家です。遺伝医療を必要としている患者や家族に、適切な遺伝情報や社会の支援体勢等を含むさまざまな情報提供を行い、心理的、社会的サポ-トを通して当事者の自律的な意思決定を支援する保健医療・専門職です。

選択肢 1 は妥当です。
APC は、大腸がん発症に関わる遺伝子です。(101-234235)。

選択肢 2 ですが
BCR-ABL は、慢性骨髄性白血病に関わる遺伝子です。(105-59)。

選択肢 3 ですが
BRCA は、遺伝性乳がんの発症に関わる遺伝子です。(101-234235)。

選択肢 4 ですが
EGFR は、肺がん等の発症に関わる遺伝子です。

選択肢 5 ですが
PTEN は、がん抑制遺伝子です。

以上より、正解は 1 です。

問301

選択肢 1 ですが
患者の母方の家系は、家系図の右上の部分です。がんでなくなった人は見られず、不適切です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
根拠となると考えられます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3,4 は妥当です。
父方家系であるイ、及び、父方を遺伝している ウはがんの罹患、発症の可能性が高いと考えられます。

選択肢 5 ですが
未成年なので伝えてはいけない、ということはありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3,4 です。

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