薬剤師国家試験 第106回 問198-199 過去問解説

 問 題     

53歳男性。骨転移の認められる去勢抵抗性前立腺がんに対し、塩化ラジウム (223Ra) 注射液を、1回 55 kBq/kgとし、4 週間間隔で、計 6 回の投与を行うこととなった。

今回、予定どおりに患者が来院し、1 回目の投与が終了した。

問198

Ra 及び 223Ra に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 223Ra は主に α 線を放出し、219Rn となる。
  2. 体内に投与された 223Ra が放出する放射線は透過性が高く、ほとんどが体外に放出される。
  3. Ra は骨の主な構成成分である Ca と同じく周期表の第 2 族に属する元素である。
  4. 223Ra が放出する放射線は低 LET (線エネルギー付与) である。
  5. 223Ra の半減期は約 2 時間なので、周囲の人の被ばくに注意する必要はない。

問199

外来がん治療担当の薬剤師は、この注射液の初回投与を終えた患者に対し、外来化学療法処置室において、投与後1週間における生活上の注意事項を伝達することになった。なお、この患者は、妻と長男の3人暮らしである。

薬剤師が説明する内容として、誤っているのはどれか。1つ選べ。

  1. 入浴するときは、細菌感染を防止するため、家族の中で一番初めに入るようにしてください。
  2. 着用した衣類は、他の家族の方の衣類とは別にして洗ってください。
  3. 便座に腰かけて排尿してください。
  4. トイレの使用後は、水を2回以上流してください。
  5. 排泄物がこぼれて便器や床に付着した場合には、トイレットペーパーを用いてよく拭き取り、トイレに流してください。

 

 

 

 

 

正解.
問198:1, 3
問199:1

 解 説     

問198

選択肢 1 は妥当です。
α 線を放出し、質量数が 4 減ります。

選択肢 2 ですが
α 線は透過性が非常に小さく、体外にほぼ放出されません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
この知識はなかったと思います。選択肢 2,4,5 を切れることが期待されている問題と思われます。

選択肢 4 ですが
α 線なので、高 LET です。選択肢 4 は誤りです。ちなみに、LET とは、放射線が媒質中を通過する際、媒質に与えるエネルギーの事です。低 LET 放射線の例は、β、γ、X線 などです。高 LET 放射線の例は、α線 です。(100-242243)。

選択肢 5 ですが
223Ra の半減期は約 11 日です。ちなみに、219Ra の半減期は約 4 秒です。この知識はなかったかもしれませんが、半減期が2時間だから周囲が被ばくに注意しなくてよい、という記述はおかしいと判断できるのではないでしょうか

以上より、正解は 1,3 です。

問199

α 線を出す放射性物質が、わずかにですが様々な形で放出されうるため、周囲の人も含めた余計な被ばくを避けるために、日常生活上で注意が必要です。このような観点から考えれば、入浴時に最初に入ってしまうと、後の入浴者に影響がある可能性があります。従って、入浴は最後にし、その後にしっかりと浴室を洗い流すように注意すべきであると考えられます。

以上より、正解は 1 です。

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