100回薬剤師国家試験 問242-243解説

 問 題     

70歳男性。甲状腺がんの多発性骨転移による疼痛があり、外部放射線照射療法及びオピオイドの投与を行ったがコントロール困難であった。疼痛緩和を目的として、放射性医薬品を使用することになった。

問242

この患者に投与すべき薬剤はどれか。1つ選べ。

  1. ヨウ化ナトリウム(123I)カプセル
  2. イットリウム(90Y)イブリツモマブチウキセタン注射液
  3. フルデオキシグルコース(18F)注射液
  4. ジメルカプトコハク酸テクネチウム(99mTc)注射液
  5. 塩化ストロンチウム(89Sr)注射液

問243

この患者に投与すべき薬剤から放出され、疼痛緩和に寄与する放射線に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 放射線荷重係数は、20である。
  2. 低LET(線エネルギー付与)放射線である。
  3. 粒子線である。
  4. 内部被曝による生体影響はない。
  5. 薄い紙一枚で遮蔽できる。

 

 

 

 

 

正解.
問242:5
問243:2, 3

 解 説     

問242

選択肢 1 ですが
123I ヨウ化ナトリウムカプセルは、検査・診断薬です。疼痛管理が目的の薬では、ありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
90Y イットリウムイブリツモマブチウキセタンは、CD 20 を標的とした、再発又は難治性の
非ホジキンリンパ腫、細胞リンパ腫 に用いる薬です。甲状腺がんは、対象ではありません。また、疼痛緩和が目的の薬でも、ありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
18F フルデオキシグルコースは、さまざまな悪性腫瘍などの診断に用いられる薬です。疼痛緩和が目的の薬では、ありません。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
99mTc ジメルカプトコハク酸テクネチウムは、腎疾患の診断に用いられる薬です。甲状腺がんは、対象ではありません。また、疼痛緩和が目的の薬では、ありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は、正しい選択肢です。

以上より、正解は 5 です。

問243

選択肢 1 ですが
放射線荷重係数とは「Sv(シーベルト) = Gy(グレイ) × 放射線荷重係数」 という関係で用いられる定数です。人体への影響の程度を表す係数 といえます。β、γ、X線に対しては 1、α 線に対しては 20 と定められています。

89Sr が放出するのは、β 線です。放射線荷重係数は、 1 です。よって、選択肢 1 は、誤りです。

選択肢 2,3 は、正しい選択肢です。
LET とは、放射線が媒質中を通過する際、媒質に与えるエネルギーの事です。低 LET 放射線の例は、β、γ、X線 などです。高 LET 放射線の例は、α線 です。また、β線の実体は、陽電子又は電子 であり、粒子としての性質を持つため、粒子線です。

選択肢 4 ですが
生体影響は、あります。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
紙一枚で遮へいできるのは、α 線です。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2,3 です。

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