106回薬剤師国家試験 問102解説

 問 題     

酸性の強さを比較したもののうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、第一解離のみを比較するものとする。

 

 

 

 

 

正解.4, 5

 解 説     

(1)は同族原子の酸性度の比較です。この場合、原子番号(周期)の大きい原子ほど酸性度が大きくなります。その理由は、S原子のほうがO原子よりも原子半径が大きいので、-SHは原子核同士の距離が遠いために電離しやすい(相手にHを渡しやすい)からです。

よって、CH3SHのほうがCH3OHよりも酸性が強いので、(1)は不適です。

(2)はどちらも正電荷を持っているため、相手にHを渡したあとは下図のような共役塩基になります。

上図左側のピリジンは芳香族化合物なので、右側のピペリジンよりも安定した物質です。共役塩基が安定だと元の物質の酸性度が大きいということなので、選択肢(2)の左側の物質のほうが酸性が強いと判断できます。よって、(2)も不適です。

(3)も(2)と同様、共役塩基の安定性を考えるとわかりやすいと思います。それぞれの共役塩基は下図のようになります。

上図の通り、左側の物質は電気陰性度の高いF原子によって中心炭素がδ+に偏っています。そのため、Oから流れてくる負電荷を受け取りやすく、負電荷が非局在化して安定な状態といえます。右側の物質ではそのようなことは起こらず、負電荷が局在化していて不安定です。

よって、共役塩基が安定なのは左側の物質なので、選択肢(2)の左側の物質のほうが酸性が強いと判断できます。よって、(3)も不適です。

以上で(1)~(3)が全て不適当だったので、正解は(4)と(5)になるはずです。念のため、これらも確認しておきます。

(4)の共役塩基の構造は次のように表すことができます。

上図右側だと正電荷のN原子が隣接炭素から電子を引っ張っているため、隣接炭素がδ+となっています。そのため負電荷がこの炭素に流れやすくなるので、上図右側の物質がより安定な共役塩基となります。よって、選択肢(4)の右側のほうが酸性が強いため、正しい選択肢です。

(5)の共役塩基の構造は次のように表すことができます。

上図のように左右どちらもδ+の炭素がありますが、負電荷の近くにδ+があるほうが負電荷を流しやすいので、上図右側のほうがより安定な共役塩基といえます。よって、選択肢(5)の右側のほうが酸性が強いため、正しい選択肢です。

以上から、正解は 4 と 5 となります。

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