薬剤師国家試験 第105回 問274-275 過去問解説

 問 題     

14歳女児。身長160cm、体重52kg。造血幹細胞移植後の真菌感染症予防のため、フルコナゾールカプセルで管理を行っていた。しかし、画像診断や検査値などからアスペルギルス症が疑われ、注射用ボリコナゾールが投与されることになった。

検査値:AST 25IU/L、ALT 37IU/L、γ-GTP 40IU/L、血清クレアチニン値 0.7mg/dL

問274

病棟担当薬剤師は、注射用ボリコナゾールの投与にあたり、処方監査を行い、投与後のモニタリングについて検討した。薬剤師の対応として適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 経口剤への変更を提案する。
  2. 体重あたりの用量(mg/kg)が、成人の標準用量よりも低用量で開始されていることを確認する。
  3. ボリコナゾールによって代謝が強く阻害される薬剤が併用されていないことを確認する。
  4. ボリコナゾールの血漿中濃度は24時間以内に定常状態に達すると考えられるため、TDM用の採血は投与開始日の翌日に行う。
  5. 重篤な肝障害が現れることがあるので、肝機能を定期的にモニタリングする。

問275

初日はボリコナゾールとして1回300mgを1日2回、2日目以降は1回200mgを1日2回点滴静注し、治療を行ったが、症状やレントゲン陰影の改善はみられなかった。この患者におけるボリコナゾールの定常状態での平均血漿中濃度は1.0mg/Lであったため、薬剤師は治療域に達していないと判断した。

この患者における定常状態における平均血漿中濃度を2.5mg/Lとしたい。ボリコナゾールの1日投与量(mg/day)として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

ただし、ボリコナゾールの定常状態における平均血漿中濃度と体内からの消失速度の関係はMichaelis-Menten式で表され、Km値は0.50mg/Lとする。

  1. 500
  2. 600
  3. 700
  4. 800
  5. 1,000

 

 

 

 

 

正解.
問274:3, 5
問275:1

 解 説     

問274

選択肢 1 ですが
小児に対するボリコナゾール(ブイフェンド)錠の用法は「注射剤による投与を行った後」食間に経口投与します。これから注射剤を投与しようというタイミングで経口剤への変更提案は不適切と考えられます。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
12 歳以上 50kg 以上なので、成人の標準用量より低用量での開始は必要ありません。ボリコナゾール注射剤に関する知識として知らなくても、ちょっと大きめの子供なので、低用量では不足するのではないかと推測できるのではないかと思われます。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当な記述です。

選択肢 4 ですが
通常投与では、定常状態に達するまで5日程度かかるとされています。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当な記述です。

以上より、正解は 3,5 です。

問275

ミカエリスメンテン式 v = Vmax ・[S]/( Km +[S])は、基礎知識です。定常状態においては、投与量=消失速度 v と考えられます。

治療域に達していない時に、定常状態においてボリコナゾールは 1日 400mg 投与です。よって、左辺の v = 400mg/day です。[S]は基質濃度=薬物濃度なので、1.0 mg/L です。代入することで、Vmax がわかります。

求めたい投与量=消失速度 を v’ とします。求められた Vmax を用いると

です。

以上より、正解は 1 です。

類題 104-175

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